50人の個人面談で見えたビジネス書が教えてくれない「劇的に成長するスタッフ」に共通するたった一つのこと

【指揮】部下を潰さない「現場マネジメント」

管理職としての大きな仕事の一つである、スタッフとの定期個人面談。約50人のメンバー全員との対話をようやく終え、今ホッと一息ついているところ。

この数年間、同じように面談を継続してきて、年々はっきりと浮き彫りになってきた「ある違い」があります。それは、「年々成長していくスタッフ」と、「いつまでも成長が見られないスタッフ」の決定的な差です。

面談では当然、労務環境への要望や今後のキャリア、この職場で働き続けるかといった身辺的な確認も行います。しかし私の最大の目的は、彼らがセラピストとして、そして一人の人間として成長していくための手助けをすることです。

目標設定シートを書きましょう、課題を細分化しましょう、フローチャートを作りましょう……。世の中のビジネス書には、成長のためのノウハウがあふれています。大谷翔平選手が使っていたことで有名な「目標達成シート(マンダラチャート)」のようなワークショップ的な可視化も、確かに素晴らしい方法ですし、私も試したことがあります。

しかし、今回50人の生の声を聞き続けて、私はもっと根本的な、成長の「原動機」とも言える共通項に気がつきました。

劇的に成長するスタッフはみんな、「自分の心(感情)に耳を傾けている」ということ。

成長するスタッフの言葉には「エモい」が散りばめられている

成長するスタッフと話していると、男女問わず、その言葉の中に感情を表現するワードが自然と散りばめられています。

「働いている中で、やっぱり自分はこういうアプローチが好きなんです」 「こういうリハビリの瞬間が、本当に良いと思うんですよね」

彼らが耳を傾けているのは、ポジティブな感情だけではありません。 「逆に、こういう対応をされるとすごく不快なんです」 「こういう現状には、正直イライラしますし、ムカつきます」

こうしたネガティブな感情も含めて、彼らは「自分がどう感じているか」を漠然とでもしっかり言葉にできるのです。

一方で、なかなか成長が見られないスタッフの面談からは、「自分がどうありたいか」「どうなりたいか」という感情が、驚くほど抜け落ちています。主語が「自分」ではなく、「業務」になってしまっているのです。

彼らの目標や振り返りは、どうしても教科書的で曖昧になります。 「患者さんのニーズを聞いて、退院後の生活に必要なADLを明確にして、評価をしっかりやった上でプログラムを立てていきたいです」

言葉は正しい。しかし、そこには人間味が感じられません。以前の記事でも触れた「真面目系クズのリーダーA君」のようなタイプが、まさにこれに当てはまります。

人間は理屈ではなく「報酬系」で動く生き物

なぜ、感情を無視した「教科書通りの理屈」では人は成長しないのでしょうか。 その答えは、脳の「強化学習(システム)」の仕組みにあります。

人間が行動を継続し、それを習慣として強化していくためには、脳内の「報酬系」が働かなければなりません。そして脳にとって最大の報酬とは、他ならぬ「強化学習をもたらす強烈な感情」なのです。

「これをやったら、患者さんがめちゃくちゃ喜んでくれて超嬉しかった!」 「スタッフが笑顔になってくれて、最高に気持ちよかった!」 という圧倒的な快感。あるいは、 「これができなかったのが、死ぬほど悔しい。次は絶対に変えてやる」 「こういう状態は絶対に嫌だから、何が何でも無くしてやる」 という強烈な不快や怒り。

こうした「うれしい!」「悔しい!」というエモーショナルな揺らぎこそが、脳に「もっと行動せよ」「次はこう改善せよ」という命令を下す燃料になります。あまりに理屈だけで物事を進めようとしても、脳がそれを「報酬」として認識しないため、継続的な習慣にはなり得ないのです。

一人の人間として「感じるもの」を大切にしてほしい

今回の1ヶ月に及ぶ面談を通じて、私は成長における普遍的な真理を突きつけられた気がします。

「俺は今、何をやってる時が一番楽しいんだろう?」 「これ、面白いな」 「これはつまらないな、嫌だな」

スタッフ一人ひとりが、もっと自分の行動に伴う「生々しい感情」を引き出し、自分の声に耳を傾けること。それこそが、すべての成長のスタートラインです。

だからこそ、管理職である私自身も、スタッフに対して理屈や数字だけを求めるような接し方をしてはならない、と強く反省しました。彼らの出す成果の裏にある「感情」に、もっと目を向け、耳を傾けていかなければなりません。

感情は、誰かに言われて無理やり動かすものではありません。 それぞれが一人の人間として、日々湧き上がる感情を大切にし、それをエネルギーに変えていく。

これこそが、人が劇的に変わるための、最もシンプルで最も強力なシステムなのだと確信しています。

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