「とにかく明るくて、よく笑う。でも、どこか不自然なほどテンションが高く、入職数日でタメ口をきくような新入職員」
あなたの職場にも、程度の差こそあれ、似たようなタイプがいなかったでしょうか? 今回は、私が実際に直面した、ある女性新入職員との「1年間の戦いと再生の記録」をお話しします。
部下を持つ管理職の方にも、そして今、職場で「無理をして笑っている」あなたにも、どうか最後まで読んでほしい記録です。
違和感と、ひび割れた「明るい仮面」
入職当初、彼女は非常に軽い印象を受けたものの、その明るさで患者さんからの受けも良く、スタッフの中でもいい意味で目立つ存在でした。
しかし、3ヶ月が過ぎた頃から「違和感」が確信に変わっていきます。
- 連絡が遅れる、遅刻をするなどのミスが目立ち始める。
- リハビリ中も周囲をキョロキョロと見回し、目の前の患者さんに集中できていない。
- 面談で「彼女自身の悩み」を聞きたいのに、なぜか「他人の批判や良くないエピソード」ばかりを話し、話を逸らす。
彼女の成長を促したいのに、彼女自身の「本当の姿」が全く見えてこない。そんな状態が数ヶ月続きました。 そしてある日、彼女は急に数日間、仕事を休みました。
告白。仮面の下に隠されていたもの
休み明け、彼女の口から出た言葉は「実は、もともとうつ病を抱えている」という告白でした。
ここで、すべての合点がいきました。 彼女の異常なほどの明るさや突飛な行動は、性格ではなく「本当の弱い自分を隠すための、過剰な防衛システム(鎧)」だったのです。
面談で他人の話ばかりしていたのも、自分に目が向けられ、評価されるのが極端に怖いからだったのでしょう。「こんな自分を見せたら、ダメなスタッフだと思われる」。その恐怖が、彼女に分厚い仮面を被らせていたのです。
(こうした「不安を隠すためのコミュニケーションのズレ」については、以前書いた[女性OS・男性OSの違いの記事]でも触れていますが、彼女の場合はそれが極限状態に達していました。)
荒療治:「ダメな自分」を直視させる面談
私は面談で、少し踏み込んでみました。 「夜は寝れてる? 仕事が終わったら体力は残ってる?」
彼女の答えは悲痛でした。 「家に着く頃には体力はゼロで、倒れるように寝てしまう。親にも心配される。なのに、夜中に何度も目が覚めてしまうんです」
他のスタッフの何倍も気を張り、虚勢を張り、本当の自分を見せないようにバリアを張り続けていれば、心身が悲鳴を上げるのは当然です。
私は彼女に伝えました。 「本当の、ありのままの自分でいい。無理をして明るく振る舞わなくていい。仕事ができないわけじゃない、良い部分もたくさんある。だから、まずは『ダメな自分』も認めてあげよう」
その瞬間、彼女の目からボロボロと大粒の涙がこぼれ落ちました。
地獄の2ヶ月間と、私の恐怖
そこから彼女はどうなったか。劇的に良くなった……と言いたいところですが、現実は映画のようにはいきません。
彼女は、そこから2ヶ月間、すっかり元気をなくしました。
休む日もありました。朝の表情を見ると、本当に辛そうでした。「あぁ、私の介入は失敗だったか。彼女をさらに苦しめてしまった。このまま退職してしまうかもしれない」。上司として、正直ヒヤヒヤする毎日でした。 たまに「大丈夫?」と声をかけても、空返事で暗いままです。
しかし、不安な私の中にも、個人的な経験に基づく「一つの希望」がありました。 人は、自分の見たくない「弱さ」や「欠陥」を直視した時、猛烈な痛みを伴うのです。彼女は今、自分の弱さから逃げず、真正面から見つめ合っている真っ最中なのだと。
ありのままの自分に蓋をしたまま一生を生きる方が残酷です。早いうちにこの痛みを乗り越えることが、彼女の人生にとって絶対にプラスになる。そう信じて、私はあえて手を出さず、彼女が自力で戦い抜くのを見守りました。
瞳に宿った「本物の光」とレジリエンス
それから2ヶ月が経った頃。 ふと、彼女の目に「光」が宿り始めました。
昔のような、過剰な演出を帯びた不自然なテンションではありません。彼女が本来持っていた落ち着きの中に、心地よい声のトーンや表情が自然に足されたような、「本物の明るさ」に変わったのです。
彼女は、弱い自分を見つめ続けた地獄の2ヶ月を経て、ついに「そんな自分でもいいんだ」と認められたのかもしれません。
私はあえて核心は聞きませんでした。ただ一言、 「とても目に力があって、輝いて見えるよ」 とだけ伝えました。
彼女からは、「すごいですね。よくわかりますね」とだけ返ってきました。その時の彼女の静かな笑顔を、私は一生忘れません。
長い人生、落ち込んだり自暴自棄になったりする時期は誰にでもあります。しかし、そこから這い上がる力([レジリエンス:精神的復元力])を鍛えることができれば、未来は必ず開けます。
まとめ:信じることで、道は開ける
もしあの時、私が彼女の表面的な「明るさ」だけを見て、ただ擁護し続けていたら。彼女が自分の弱さに打ち勝ち、真のレジリエンスを手に入れることはなかったでしょう。
彼女の底力を信じて、本当に良かったと心から思います。
――最後に。 今、もしあなたがかつての彼女のように、職場で心をすり減らし、無理をして笑っているのなら。
「ダメな自分も、ありのままの自分でいい」
そう言ってくれる誰かや、場所が、この世界のどこかに必ずあると信じてください。 自分の心と体が完全に壊れてしまう前に、「今の場所がすべてではない」という小さな希望だけは、どうか手放さないでほしい。
彼女の目に再び宿ったあの光が、いつかあなたの中にも灯ることを、私は心から願っています。
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