理学療法士が教える社会人として幸せに働くために必要なマインド その1

woman in black cloak with fishing pole standing in beach 仕事効率化
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日曜日の夜は憂鬱だ。次の日を思い浮かべるだけで胸がザワザワし始める。一度ざわめき始めた心音はちょっとやそっとのことでは落ち着かない。

「明日にはあの上司と会わなくちゃいけないのか。」「あのタスクの提出がもう間近に迫っている。」「明日のプレゼンは果たしてうまくいくのだろうか。」こんな悩みが睡眠を妨げて、気づいたら疲れが取れたのかわからないままベッドから出なければならない月曜の朝。こんな日々を送っていませんか。私は20年近く理学療法士として病院に勤務し、中間管理職としても14年近くになります。20代後半から30代半ばくらいまでは、私自身が先ほど述べたような週末と週初めの日々を送っていました。精神的にとても辛かった記憶があります。以前の記事でもお伝えしましたが、不眠に悩まされてしまった時期もこの頃です。当時の私は、この悩みを解決してくれる画期的な方法を見つけたい一心で本やDVD,ブログなど様々なものを漁りくっていました。その結果、今では、仕事で思い悩むことや苛立つことがあっても、以前の自分と比べて、すぐに正常な自分を取り戻せる方法を見つけることができました。どれだけ悩んでも1日で切り替えられます。これは一朝一夕でできるものではありません。しかし昔の私と同じ思いをしている方も少なからずいらっしゃるのではと思い、同じ境遇に悩む方々にこれから伝えるマインドを持ってもらい、不毛に悩んだり、力が発揮できるはずの仕事から退かなければならなくなったりすることを極力減らしたいのです。ぜひ、このマインドを心に留めておき、無駄に悩まずに幸せに仕事ができるようにしていきましょう。

幸せに働くために必要なマインド その1 レジリエンス

レジリエンスとは

レジリエンス(resilience)は、困難やストレスに直面した際に、それに対処し、回復する力を指します。この概念は、もともと物理学で物体の弾性を示す用語として使われていましたが、心理学においては「精神的回復力」や「復元力」としても用いられるようになったそうです。語源は、ラテン語の「resilire」および「resilio」に由来するそうで、これらの言葉は「跳ね返る」という意味があります。

さて、みなさんのレジリエンスはどうでしょう。と、言われても世の中で自分のことほど分かっているようで分からないものもありません。ですので、自分の身近な人のレジリエンスはどうか思い浮かべてみましょう。悩みを何日も何日も引きずってなかなか抜け出せない人もいれば、翌日には綺麗さっぱり切り替えられていて元気になっている人もいます。落ち込んだり悩むことがない人はいません。その状態からどれだけ早く跳ね返り、立ち直れるか。その立ち直る時間の差がレジリエンスによるものなのです。

人生にはいろんなことが起こります。嫌なことがあれば落ち込むし、嬉しいことがあれば喜びます。例えばある月曜日に上司に注意されたとします。その時は誰でも気分は落ち込みますが、もし立ち直るのに1週間かかる人と、火曜日にはもう立ち直っている人がいたらどうでしょう。もし1週間落ち込んでいたらそこで起きるはずだった嬉しい出来事、例えば夕食の団欒や、友人からの食事や異性からのデートの誘い、子供との楽しい時間などがなくなってしまうかもしれません。またはあったとしても心から楽しめなくなってしまうのです。

これは誰もが頭では分かっていることだと思います。誰だって悩みたくて悩んでいるわけではなくし、早くその状態から抜け出したいと思っているに違いありません。ちなみに私は中間管理職として働いていますが、間違っていることに対して黙っていられないタイプで、上司に意見をしてしまったり、部下に間違いを強く指摘してしまう性格です。それがゆえに上司に注意され、落ち込むことも多々あります。先日も上司の方針に意見して激怒させてしまいました笑。翌日は落ち込みましたが、その翌日にはもうどうでも良くなっていますし、その上司とも普通に話します(その上司の器が大きいとも思いますが笑)。このマインドを持てば、大抵のことは乗り越えられますし、何より自分が落ち込むことに対してあまり恐れなくなります。実際のところ、何かアクションを起こそうとしてもなかなか行動に移せない人は、その結果によって自分が落ち込む可能性があるからではないでしょうか。「こう言ったらどう思われるだろう?」は実のところ、「こう言ったらどう思われて、【自分が落ち込んでしまわないだろうか?】」なのです。大丈夫です。人は落ち込みます。大切なのは落ち込んだとしても、すぐに跳ね返ることです。

逆の立場で考えてみましょう。あなたは管理職です。部下のミスに対して注意したとします。あなたは注意したわけですから、その日くらいは少し頭に残っているでしょう。「言いすぎたかな」、「なんで何度行っても分からないんだろう」など色んな感情があるかもしれません。しかし次の日にはもう違うことで頭の中はいっぱいです。なんせ管理職ですから次から次へと問題はやってきます。2日後にはほぼ忘れていると思います。ですが、怒られた部下はどうでしょう。1週間ずっとモヤモヤしているかもしれません。

理学療法士はメンタル落ちやすい

私は理学療法士としてしか働いたことがありません。ですので、他のお仕事については語ることはできませんが、少なからず医療関連、特にコメディカル(医師以外の医療従事者)の方々の仕事のストレスについては十数年関わってきたので少しは理解できると思います。

医療従事者はとてもメンタルが落ちやすい仕事のようです。なぜなら相手が健常人ではなく、病気をしたり怪我をしている方だからです。怪我や病気を患って元気になる人はいません。一見元気そうに見える人もいますが、一人病室にいる時は少なからず落ち込まれているのは当然なことです。人は他人に少なからず影響を与えたり、与えられたりするものです。仕事柄、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士や看護師は患者様と一緒にいる時間がとても長い職種ですので、患者様から心理的な影響を与えられやすい立場なのです。さらに真面目な方ほど、患者様をより良くせねばならない、という使命感や責任感で自分を追い込みやすくもなります。これは避けては通れない問題です。ですので、これからお伝えするいくつかのレジリエンスの高め方を読んでいただいて、少しでも心のすり減りを減らしてもらえれば幸いです。

レジリエンスの高め方 その1 過剰な責任感を手放す

回復期病棟に勤めていたかつての私は、患者様を治すために必死になっていました。自分が治さなければ患者様は不幸になってしまう、私が絶対によくしなければならない、と。昼休みに食事をしながら参考書を読んだり、休日は講習会に参加したり、できるだけ知識や技術を吸収するために必死で勉強していました。しかし、どれだけ知識や技術が増えても、常に不安がつきまとい、完全には拭え切れませんでした。今思えば、その不安の正体は知識や技術の足りなさではなく考え方にあったのだと確信しています。

この内容は責任感が強い真面目な方にこそ読んでいただきたいです。まず個人的な考えとして、医療従事者になった方は少なからず自分が誰かのために役に立ちたい、という優しく真面目な性格の方がほとんどだと思っています。お金持ちになるためにコメディカルになりました、という人は珍しいと思います。ですから上記の通り、その分患者様から少なからず負の心理的な影響を与えられやすいのです。そこで、20年近く理学療法士として働いた結果、行き着いた考え方は、過剰な責任感は必要ないということです。非常にドライに聞こえるかもしれませんが、怪我や病気をしたのは自分ではなく対象者であり、そこに自分の責任は全くありません。対象者の人生において生じた出来事の一つです。そしてその後病院に行き、自分の元にやって来られたのもその対象者が選んだ結果である、ということです。そこで、つい昔の私のように対象者の生活や人生を背負い込んでしまうことがしばしばあります。それは少し過剰でもあり、今となっては少しだけ傲慢な気もしています。だからと言って手を抜いていいというわけでは決してありません。ただ、過剰に自分に責任を置きすぎないようにすることも大切です。もちろん担当したら自分の持つ知識・技術・経験で持って最大限の回復をもたらせるように尽力することは当然です。そのために自己研鑽を絶えず続けていくことは必須です。ですが、そこまででいいのです。対象者の人生の全てをこちらが引き受ける必要はありません。何度も言うように自分の人生をどうするかは対象者の問題です、私たちができることはそれを最大限叶えられるようにお手伝いするだけなのです。
我々は神様でもなければ、天才でもありません。だから普段から学んだり、色んなものから自分にないものを吸収して、対象者により良いものをたくさん提供できるようにしておく、ただそれだけなのです。

レジリエンスの高め方 その2 坐禅

人の心は、心電図のように上下するものです。上に上がれば元気だし、下に下がれば落ち込んだ状態になる。これをいかに真ん中に保てるか、が重要です。上がったものはいつか下がりますし、下がったものもいつかは上がります。これを生体の恒常性(ホメオスタシス)と言います。この上下動が大きすぎるのを躁鬱と呼び、下がりっぱなしなのが今回のレジリエンスが低いことを指します。ちなみに上に上がることが良いことだと勘違いしやすいのですが、上がりすぎるのも考えものです。以前お話ししたこともありますが、私には不眠に悩まされた時期があります。朝まで全く入眠できずに、ずっと覚醒し続けてしまうのです。今思えば、頑張りすぎた反動で心が安らかにならなくなってしまった、即ち上がりっぱなしになっていたのだと思います。また、元気な時ほど人間関係で失敗した経験が皆さんにもあると思います。つい勢いのまま余計なことを言ってしまったり、他人に攻撃的になってしまったり、というような感じです。

重要なのは真ん中にいることです。心電図で言うと死んでいる状態ですが、もしかしたら自分で心を死=即ち無にすること、そこにレジリエンスの本当の意味があるのかもしれません。

坐禅という言葉は聞いたことがあると思いますが、実際に生活の中で実践している方は少ないのではないでしょうか。その理由は、どこかスピリチュアルなもの、宗教チックなイメージが強く、無宗教の日本ではあまり重要視されていない、のが理由の一つだと思います。ですが実際、私はこの坐禅に何度も助けられました。前述したように、薬に頼らずに不眠から抜け出せたことや、普段から疲労や心身の乱れを修正して、すぐにいつもの自分に戻してくれるのは坐禅の力に他なりません。皆さんに少しでも納得がいって実践しやすいように、なぜ坐禅が心の安定に効くのか、自分なりに検討したり調べたりしてその理由をまとめてみました。

まず一つ目は、瞑想は自律神経を整えてくれます。自律神経とは人が生きていくために環境や状況に合わせて呼吸や血液の循環、体温など調整する神経です。自律神経には2種類、交感神経と副交感神経があります。

交感神経の働き:

  • 体を緊張させる
  • 呼吸を浅く早くする
  • 心拍数を上げる
  • 血管を収縮させる(血圧上昇)
  • 皮膚血管を収縮させ、毛孔も収縮させる

副交感神経の働き:

  • 消化液の分泌や吸収、排泄を促進する
  • 体をリラックスさせる
  • 呼吸を深くゆったりさせる
  • 心拍数を下げる
  • 血管を弛緩させる(血圧低下)

坐禅は呼吸を大切にします。呼吸によって自分で自律神経をコントロールできると言われています。即ち深く呼吸するによって交感神経を抑制し、副交感神経を働かせていきます。それだけ?と思われるかもしれませんが効果は抜群です。

もう一つの理由は、脳を休めることができる、です。

坐禅でよく見かけるこの姿勢。この形には意味があることを知っていますか?私たちが起きている時、脳は重力に負けじと身体を支えるために常に働き続けています。働いているのですから少なからずエネルギーを使うし、疲労もします。そこで昔の仏教の偉い方々が考えた坐禅の足の組み方、手の形の作り方は、脳を使わず、身体の構造だけで支えているこの形になったのです。起きながらにして脳の働きを最小限にする、そうすることで心に余裕が生まれます。ざわめきだっていた心の波が穏やかにする方法を昔の人はよく知っていたのです。

方法は簡単です。足を上の写真のように組みます。両方足が太ももの上に重ねられなければ片側だけでも大丈夫です。そして、手を置きます。構造で支える必要があるので、置く場所を色々確かめて一番肩の力が抜ける場所を探します。姿勢ができたら全身の力が抜けていることを確かめましょう。この時視線は前の一点に留めておきます。そこで鼻からお腹に空気を溜め込むイメージで息を吸い、口からゆっくり吐き出します。息を吸うときは肛門が下に下がるイメージで行うそうです。これを10分続けてみてください。ほとんどの人が最初はたった10分、もしくは5分でさえ続けることができないと思います。私も全くできませんでした。スマホ眺めていると一瞬で過ぎ去る10分がとてつもなく長く感じるのです。練習すると徐々に伸ばしていけるのがまた不思議なのですが、ぜひ皆さんにも実践してもらいたいものです。必ず心が落ち着いてきます。

レジリエンスの高め方 その3 サードプレイスを持とう

悩める中間管理職は、おそらく30から40代の方が多いため、子供ができ、育児をしてと家庭の仕事もそれなりに抱えています。仕事に行けば管理業務で大忙しでしょう。そうするとどうしても家と職場の2つの場所の往復で1日が終わり、1週間がすぎ、いつの間にか1年が経っています。それはそれでとても素敵なことなのですが、もしレジリエンスが低い場合、その生活を見直してもいいかもしれません。ここで提案するのが【サードプレイス】を持つことです。皆さんも聞いたことがあるかもしれません。要は家と職場以外に行く場所を決めるということです。ちなみに私は、週1回知人の家に行って英語を学んでいます。そこで英語を学びながら人生相談したり、くだらない身の上話をしたりしています。英語を勉強するので頭は疲れますが、感覚的にはいつもと違う脳を使っている疲労という感じで、仕事とはまた違う疲労感で心地いいのです。また、息子とチームメイトとその保護者、友人と週1回5人で一緒にサッカーの練習をしています。息子とのコミュニケーションにもなりますし、ここも私にとって心身ともにリフレッシュできる場所です。あと日曜日は自宅で朝食を取らずに、職場の近くのカフェに行ってモーニングを摂りながら美味しいコーヒーを飲んでこのブログを書いたり仕事をしています。これもいつもの違う感覚で楽しいのです。

もしサードプレイスがなければ作ってみることをおすすめします。そこでもいいのです。週1回は一つ前の駅で降りて歩いて帰ってみる、休みの日にジムに行って汗をかく、など自分が心地いいと思える場所を作っておくのです。ここで注意点は、いつもとは違う刺激が入ることです。例えばギャンブルなどや1日中ゲームに没頭するなどはお勧めしません。身体を使わずにドーパミンやβエンドルフィンなどの脳内物質が出るものは心地よいリフレッシュをもたらすことはなく、むしろ終わったのちどっと疲れてしまったり、軽い罪悪感を感じたりしてしまいます。そういったものではなく、できたらいつもと違うこと脳や身体を動かせるものがより望ましいと思います。ぜひサードプレイスを作ってみましょう。

ここで「わかってはいるけど時間がない」と思った方は要注意です。私の経験上、レジリエンスは低い方は、例外なく「行動できない」人が多いです。できない理由を探し、いつもと同じ生活を繰り返す、変化を望まない傾向にあります。

時間がない、といいながら落ち込んでいる時間は多くていいのでしょうか。80歳まで生きるとしたら人生は4000週間しかありません。そのうち落ち込んでやる気がなく、人と楽しく過ごせない1週間が2000週間なのか500週間なのか、どちらの方が幸せでしょう。いつか抜け出せるだろう、なんて考えない方がいいです。その過去の考え方が今の自分を作っています。変えるのはいつだって今しかありません。

レジリエンスの高め方 その4 落ち込んでいる自分を受け入れよう

もちろん私も落ち込むことはたくさんあります。そもそも落ち込むことは悪いことでしょうか。晴れの日もあれば雨の日もある、暴風雨の日だってあるのと同じで人だって自然の一部です。人だけいつも晴れてばかりの方が不自然です。私は、どうも心が元気にならない落ち込んでいる時はこう考えています。「これはちっと疲れているな、さっさと仕事を終わらせて帰ろ」。人のせいや何かのせいにせずただ自分が疲れているだけ。なるべくゆっくりお風呂に入ったりすぐ寝るようにすれば次の日にはスッキリしています。

それだけ?と思われるかもしれませんが、大抵の人は落ち込んだ状態が悪いことだと思い込んで、そこから抜け出そうとしてしまいます。そうではなく、受け入れてしまうのです。今日は雨だ、バタバタせずにジッとしていよう、そのうち上がるだろう、と。

些細な違いが心の大きな安寧を生み出します。

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