なぜ、あなたの正論は女性スタッフの離職を招くのか?――組織をデバッグするためのOS論

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今日は、管理者が女性部下とどう向き合うか、というテーマで書きたいと思います。
WindowsとMacは、どちらが優れているかではなく『仕様』が違います。MacにWindowsのコマンドを打ち込んでも動きません。それと同じで、男性脳の理屈を女性スタッフに押し付けるのは、ただの『操作ミス』なのです。

かつて私自身、リハビリスタッフの教育を通じて、若い女性スタッフとの関わりがとても苦手でした。面談で泣かれてしまったことも何度もあり、離職が重なった時期には、その多くが女性スタッフだったこともあります。
そうしたシッパイを踏まえて、私なりにデバッグしてきた「女性スタッフとの関わり方」をまとめました。 男女問わず、部下のマネジメントに悩む方の参考になれば幸いです。


まず知っておきたい「女性の特徴」

本題に入る前に、私が学んだ女性の特徴について2つ触れておきます。これは「良し悪し」ではなく「初期設定(デフォルト)」の話です。

① 女性は男性よりリスク検知能力に長けている

黒川伊保子さんの著書「妻のトリセツ」(講談社)で私が学んだことは、「女性は男性に比べて、防衛本能としてのリスク検知能力が高い」ということです。初めて読んだときはあまり理解できませんでしたが、そのことを知ってから日常の中で他人をふと観察してみると、私では感じ取れない患者の表情の変化や同僚の体調の変動などを敏感に感じ取っているように感じることがあります。上司として情けないことかもしれませんが「え、どうしてそんなことがわかるの?何を見てわかったの?」とつい口にしてしまうことが多々あります。

男性にとっても女性にとっても異性の考えを理解することは非常に難解です。難解ですが、理解しようとすること自体に意味があると思います。ぜひこの著書を手に取って、一緒に理解を深めて、不毛なケンカを避けましょう。

背景にはホルモンバランス、身体的な防衛本能、そして人間が進化してきた過程での役割の違いなどがあるようです。女性はどうしても男性より腕力が少ない傾向にあるため、集団で協力しながら家庭や子どもを守るという役割を担ってきたため、「一人でいること」に強い不安を感じやすい一面もあるのです。

この前提を理解しておくと、同じ言葉でも男女で受け取り方が違うことが見えてきます。 同じトーン、同じ内容で注意しても、男性はケロッとしているのに、女性は深く受け止めてしまう — そんな経験はありませんか?

② 女性は「集団で支え合う」力が強い

古代からの役割の違いの影響もあり、女性は他者と協力しながら関係を築くのが得意です。中学や高校の頃を思い出すと、女子はグループで固まって行動し、男子は個々で動くことが多かったですよね。これはまさにその傾向を示しています。
この特性を理解して、チームの中で孤立するスタッフを作らないようにサポートし合える環境を整えることが大切です。


面談や日常コミュニケーションで大切なこと

1. とにかく話を「聞く」

女性は不安を感じやすい分、なかなか本音を出せないことがあります。ましてや一回り以上離れた男性の上司に本音を言えない人の方が大多数です。そこで大切なのは、上司が決して否定せず、まず話を聞く姿勢を持つことです。
「共感してもらえた」「理解してもらえた」と感じることで、ぐっと距離が縮まります。

話を聞いているうちに、内容の理不尽さや自己中心的な発言に徐々にイラっとしてしまう上司がいます。そんな時の私の聞くコツは「その話は本音ではないかもしれない」と思うことです。前述したように、本音が明確になっていてそのままストレートに表現できる人は決して多くありません。話している内容の背景にどんな不安があるのだろう?と心のうちを探ってみてください。きっと口から出てくる内容とは少し違う心の声(真のエラーログ)があります。

2. 正論を吐くな、それは生産性を下げる

3. 存在価値をきちんと伝える

女性に限らず、人は誰でも「自分の居場所がある」と実感できれば安心します。特に女性は、不安を感じやすい分、この“承認”が大きな意味を持ちます。
「あなたがいてくれて助かる」「ぜひ意見を聞かせてほしい」「この役割を任せたい」——そんな言葉で居場所に光を当てましょう。
これはお世辞やごますりではなく、チームの秩序を生む大切な「定期的メンテナンス」です。


実践ケーススタディ:組織図には載っていないが、現場の空気を支配する『真のインフルエンサー』を味方につけろ

理論だけでなく、私の実体験をお話しします。

まだ管理職になって間もない頃ですが、当時の管理職たちから少し扱いづらいと評判の女性スタッフが1人いました。元ヤン気質で、声が大きく、上司にも反発的。周囲からは「あの子をどうにかしてくれ」と言われるような存在でした。

ある年、私が院内の研究発表会で実行委員長を務めることになったとき、私はあえて彼女を委員に抜擢しました。 周囲からは「大丈夫か?」「なぜ、彼女?」と心配されましたが、私には狙いがありました。

結果から話すと、彼女は実行委員として抜群のリーダーシップを発揮し、会の成功に大きく貢献してくれました。その会は例年よりも実行委員のチームワークもよく、前年度の問題を全て解決した上に画期的なアイデアも盛り込まれ、過去最高の評価を得ることができました。

もちろん彼女には大会の方向性、私の考えを全て伝えてあります。彼女は忠実に実行してくれて、私はほとんど指示を出す必要がないほどでした。普段の反抗的な行動は、賢さと仁義を持ち合わせた性格がゆえに会社の理不尽さに対して出てきた文句かもしれません(昔のヤンキーあるあるかもしれませんね)。すなわち私は彼女に、適切な権限を与えてアライアンス(同盟)を組んだというわけです。

そもそも彼女は口は悪いものの、視点は鋭いものがあり、全体の状況を俯瞰して把握する能力、そして誰にでも忌憚なく自己表現できる胆力も持ち合わせていた。つまり、優秀であったが故に、職場の古いシステムではエラーが生じた最新OSのような人だったのかもしれません。今は私が異動して会う機会が減ってしまいましたが、会議などで顔を合わせると満面の笑みで近づいてくれます。中年の中間管理職にとって部下の女性が遠くから手を振って会いに来てくれるなんて、それほど嬉しいことはありません笑。

「キーマン」を味方にすれば、組織は安定する

その後、彼女を味方につけたことで、彼女を慕う他のスタッフへの指示コストがゼロになりました。彼女の周りのスタッフは私に対していい印象だけが残り、いつでも頼ってくれます。ハブ(中心点)となる人間を味方にすれば、情報伝達コストが最小化される、と言うことを体験した出来事です。逆にインフルエンサーに牙を剥かれたら群れで襲い掛かられるため、最大のリスクヘッジでもあります。この意味でも、この出来事がもたらした会社へのベネフィット(利益)は大きなものでした。

今思い返せば、この時初めて自分のリーダーシップ、マネジメント力を自覚した時でした。力というと大袈裟かもしれませんが、自分が感じた部下の能力に対する直感は間違っていない、と自信がついたのを鮮明に覚えています。そして人は環境や人間関係によって良くもなるし悪くもなるということを知りました。今、スタッフを生かすも殺すも管理者次第だという信念を持って働けているのもこのエピソードがあったおかげです。


ちょっとした日々の心がけも忘れずに

最後に、明日からできる小さなハックを3つ。

  • 清潔感を保つこと。
    見た目の印象で「不快」と感じさせたら、信頼関係はそこで終了です。最低限の身だしなみは何よりも大切です。
  • 会話の量は「3:7」くらいで。
    管理職が一方的に話しがちですが、部下に7割話してもらうほうが信頼が深まります。聞き上手を意識してください。
  • 日々の「小さな接触」を大切に。
    「今日は寒いね」「あの患者さん、よくなってきたね」——そんな一言が安心感を生みます。たとえ1秒でも、積み重ねれば大きな信頼になります。(ザイアンス効果)

終わりに

今はジェンダーレスの時代ですが、身体や脳の特性は確かに男女で異なります。その違いを理解し、尊重し、適切に対応することは決して差別ではありません。
マクロ(性別特性)の理解を前提に、個人ごとの違い(ミクロ)を尊重する。それが本当の意味での「人材マネジメント」ではないでしょうか。

私自身の失敗から学んだことが、同じように悩む管理者の皆さんのお役に立てば幸いです。

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