理学療法士に関わらず、社会人のほとんどは、朝起きて、バタバタと着替えて朝食をとり、出勤して、勤務中も余裕はなく仕事に追われて、定時ではあがれず大なり小なり毎日残業をして、帰ってからも夕食、子育てや家事などに追われ、ようやく自分の時間があるかと思えばもう10時をまわっている、そんな毎日を過ごしているのではないでしょうか。
時間の余裕は、心の余裕に直結します。時間がない、心に余裕がない人は些細なことに心惑わされ、イライラし、仕事でもミスが頻発してしまいます。逆に心に余裕があれば他人にも自分にも優しくなれて、理不尽な上司のことも許せるかもしれないし、自分のやりたいことに時間を費やすことができます。今回のコンテンツは
- なぜ人は時間がないのか
- 時間を作り出すための実践的な手順
です。
1.なぜ忙しい人は時間がないのか
20年社会人を経験して、時間がない人にはいくつかの共通点に気がつきました。
一つ目は、【優しい人】
優しい人は、上司からの命令、部下からの発言に対して全て真面目に受け止めて、何かしら提案やアドバイスをしてしまいます。一見とてもいいことだと思われがちですが、例えば部下からの発言には愚痴に近いものも多く、それに対して真摯に受け止め、熟考し、答えてあげたとしても部下からしたら、そこまで求めていない、ということもよくあります。また上司との雑談に近い会話から、何か求められているのではと深読みし過ぎてしまい、先回りしてあれこれ考えてしまうこともあります。それがうまく評価に繋がればいいのですが、上司や部下からすれば何も求めてはいないので、ありがた迷惑だったり押し付けがましく感じてしまうようです。また他人からの依頼を断ることができず、安請け合いしてしまうことも多いです。(断ったら気を悪くしてしまうのでは)と考えてしまうのでしょう。当然、仕事は増え、時間がなくなってしまいます。
二つ目は、【忙しいこと=頑張っている、価値があると思っている人】
これもよくあるパターンです。仕事には重要度の高いものから低いもの、緊急を要するものとそうでないものがあります。しかし、時間がない人はどんな仕事に対しても一生懸命取り組み、最後の最後まで修正を加えています。しかも一生懸命やればやるほどゴチャゴチャしてきて、本質から外れていき、上司からの評価がいまいちになることもしばしば。結局何が言いたいかわからないと一蹴されて終わり、という努力と評価が見合わない結果になってしまう人も多いのではないでしょうか。逆に部下や他人に厳しく、完璧主義な管理職も時間がなくなります。些細なことにも口出しして、ちょっとしたミスが許せず、原因を追求してしまう(過去の私もそうでした)。それが続くと、部下はことあるごとに進捗状況を報告し、些細なことでも相談し始めます。当然怒られたくないからです。しかも報告する内容は自分で考えたというよりは上司に怒られないように考えられたようなものが多くなります。もしくは怒られることを恐れるあまり相談が遅れ、問題が膨れ上がってから発覚することもよくあります。もう少し早くいってくれればボヤ程度で済んだのに、と部下を叱責しても根本の原因は管理職側にあることも多々あります。
三つ目は、【自分でやりたいことがない人】
やりたいことがあって、忙しすぎて時間がない!っていう人はもちろん別です。やりたいことがあって時間に追われることほど幸せなことはないでしょう。時間がない人は、上司や家族、地域のコミュニティの人からやりたくないことをやらされ続けているのかもしれません。あれやっといて、これやっといて、と。それが当然であるかのように、疑問も持たずに、やり続けてしまうと、当然自分の時間は当然削られていきます。
2.時間を作り出すための実践的な手順
しかし、世の中にはたくさんの仕事や責任を抱え、家族をもち、プライベートでも精力的に動かれている人もいます。時間は24時間、寝る時間7時間を引くと17時間。これは全員平等なのに忙しい人と、余裕がある人がいることは紛れもない事実です。
私も、70人近いスタッフがいる病院の管理を任され、子供も3人おり、妻と共働きです。今でこそ管理業務にあたる時間が多いですが、それまでは平社員と同等の時間を臨床業務にあて、尚且つマネジメントも実施していました。疲弊していく中で、それでも自分の時間を確保するために見出した方法がいくつかあるので、余すことなくお伝えして、近い境遇にいる方々のお役に立てれば幸いです。
一番最初にやるべきこと。それは【やりたいことリストを作る】です。
前述した『自分でやりたいことがない人』の時間の枠は、空き瓶のようなものです。社会人になれば容赦無く上司や同僚、部下などからその空き瓶に仕事という物が詰め込まれていきます。詰め込んでくる人々には悪気はありません。無意識のうちに、この人に頼んでも大丈夫だな、と思い込んでいます。逆に自分からやりたいことに積極的に行動している人は、必要以上に押し付けられることが少なくなります(仕事が効率よくできる人にはもちろん多く仕事が舞い込んできますが、それはまた別の話です)。これは病院で20年近く働いていて多くのスタッフと働いてきた中で気付けた事実です。まずは、自分のやりたいことリストを書き出してみましょう。やってみると意外と難しいものです。仕事のことでもプライベートなことでもなんでも構いません、自分の人生の中でやってみたいこと、例えば海外旅行に行きたい、年収1000万円稼げるようになりたい、理学療法士として講演できるようになりたい、もっとスキルのある理学療法士になりたい、などなんでも構いません。あまり気負わずに書けるだけ書き出してみます。
次に【自分の仕事の仕分けをして、他人に振る】です。
いろんな仕事がありますが、自分の人生において価値のある仕事とそうでない仕事があります。それをまず仕分けする必要があります。そこで先ほど述べた【やりたいことリスト】をあらかじめ考えておくことが必要不可欠になります。自分に価値がない仕事は率先して他人に振りましょう。優しい人はそれができないことが多いのですが、その仕事が自分に価値がないからといって他人にも価値がないかどうかは分かりません。例えば、ある人が脳血管疾患のリハビリに関する英論文の翻訳を頼まれたとします。論文の内容を理解し臨床に活かせれば十分だけど、翻訳することは面倒くさいと感じるかもしれません。しかし将来大学院で博士号を取りたい人や海外で働きたいと思っている人にとっては、翻訳するスキルは必要ですし価値があると感じるかもしれません。翻訳を依頼しその人は内容だけ理解すれば時間も短縮でき、Win- Winですよね。
また、管理者には部下に仕事を振れないという人も多くいます。たいてい、部下も忙しそうだから、と気後れしているようです。ですが、ある程度良好な関係性があれば、部下からすれば仕事を振られることは自分が任されている感じがして、自信になることもしばしばあります。しかしここで注意すべきは、自分にしかできないことは振ってはいけません。もし管理職であれば、自分の仕事の範囲は明確にしておき、自分がやるべきことと部下に任せても大丈夫なことは明確に分けておく必要があります。たまに誰でもできるような雑務に時間をかけすぎている管理職を見かけます。これは優しい上司ではなく、自分のすべき仕事がわかっていない管理職です。絶対にやってはいけません。時間がいくらあっても足りなくなります。
部下に厳しくなりがちな場合は、人間ミスするのが当然という前提で、できるだけ部下にも寛大になり仕事をしっかり振りましょう。ミスも含めた経験をして部下も成長していきます。そうすれば逐一相談しなくても任せられるスタッフが増えていけば自分の時間は増えていくことでしょう。
そして最後に。一番大切なことが【やりたいことをやる】です。
前述したことを実践して使える時間を増やしても、やりたいことがなければまた他人からのお願い事を受け入れてしまい、時間を奪われてしまいます。断る理由がありませんからね。誤解を恐れず言うと、時間がないと悩んでいる人は、『人に何と言われようと自分の時間を使ってでもやりたいこと』がない、ということと一緒なのです。
とはいっても私のやりたいことはコレだ!って胸を張って言える人はそう多くないと思います。部下にも「セラピストとして何がやりたいかわかりません」と言われることもよくあります。やりたいことをみつけるにはどうすればいいか?それはまた別の機会にお話しします。
やりたいことをみつけるには考える時間が必要ですからね。でも自分だけの人生を歩んでいくために、最も大切なことだと思っています。
今回のまとめです。
時間が足りない人は
人に優しい人、忙しいことが正しい、意味があると思い込んでいる人、完璧主義で他人に厳しい人、目標や自分のやりたいことが見つからない人、が多いと思います。
時間を作るためには以下の手順が必要です。
- やりたいことリストの作成
- 自分のすべき仕事を明確にして、価値のないものは他人に任せる
- やりたいことを行動に移す
時間を作って自分のやりたい人生を歩みましょう