かつての私は、完璧主義と責任感に押しつぶされるような日々を送っていました。管理職として次々と舞い込むタスクに追われ、眠れぬ夜を過ごすことも珍しくありませんでした。しかし、時間の使い方を根底から見直して以来、不思議と不眠は一切なくなりました。
恐怖がなくなった瞬間、心が軽くなった
時間マネジメントを実践する中で、最も大きかったのは“恐怖がなくなった”ことです。完璧にやらねばというプレッシャーから解放された瞬間、心理的な変化が訪れました。自称「真面目系クズ」だった自分から抜け出せたのです。
他人の評価や批判も、今ではまったく違って見えます。自分が否定されているわけではなく、単に自分の出した成果物を“デバッグ”してもらっているだけ。そう考えると、意見を素直に受け入れ、改善していくことがむしろ楽しくなりました。守りに入らず、より良いものをつくることに集中できるようになったのです。
➡️【評価のデバッグ:感情をパラメーター化する】
以前の私は、批判を受けると「人格否定」されたように感じてフリーズしていました。 今は違います。他人の評価は、私のシステムの「エラー報告(バグメッセージ)」に過ぎません。
- 批判を受けた: 「お前のここが悪い」→「この箇所に不具合(バグ)がありますよ」という通知。
- 改善する: プログラムを修正する。
感情(プライド)という不安定な変数を排除し、事象(バグ)と修正(デバッグ)だけで会話する。このプロトコルを導入してから、人間関係のストレスは激減し、仕事の精度は飛躍的に向上しました。その結果、相手が私のために修正する気があるかどうかもよく感じ取れるようになりました。厳しいとか優しいという感情だけに左右されずに、その助言の裏にある、「バグを修正する気があるかどうか」、がなんとなく感じ取れるようになります。
朝の10分が、一日を変える
今の私は、夜しっかり眠り、朝5時半に起きる生活をしています。起床後はその日の仕事の全体像を整理し、10〜15分ほどで今日のスケジュールを見て、大まかな方向性やプランを立てて、たまに勉強したりします。その後軽いランニング(15分程度)も取り入れ、心身をリセット。
この「朝の10分」は、一日の質を予想よりもはるかに大きく左右します。
「今日の会議で何を伝えるか」「どの課題を解決するか」といったことを朝に整理しておく。それだけで仕事の流れが驚くほどスムーズになるのです。職場で考え始めるよりも、静かでクリアな時間に考える方が、はるかに良い答えが出やすいと感じています。私の場合、仕事場に行ったら冷静な判断は難しいことが多いです。部下からの報告、相談、他部署からの依頼、Drからの指示、さまざまなイレギュラーなイベントが次々と舞い込んでくるからです。そこで慌てないためにも、職場に行くときにはすでに完成形を持っていくだけにすると、落ち着いて物事を進めることができるのです。
一見すると「朝時間を仕事に使っている」ように見えるかもしれませんが、実際にはその分だけ業務が効率化します。ムダな残業を減らせば、早く帰ることができ、家庭にもストレスを持ち込まなくなります。朝の習慣が、結果的にプライベートの充実にもつながっているのです。
➡️【朝の10分のデバッグ:脳のスタートアップ】
以前の私は、職場に着いてから「さて、今日は何をしようか」と考えていました。これは、PCで言えば「重いアプリを立ち上げながら作業を始める」ようなもので、処理が極めて重くなります。
朝、静かな環境でプランを立てるのは、いわば「OSの先行ロード」です。
- 脳のゴール設定: 始業前に「今日のゴール」を決めておくと、脳の網様体賦活系(RAS)が働き、必要な情報を勝手にフィルタリングしてくれます。
- 意思決定コストの削減: 現場で「次は何をすべきか」と迷うエネルギー(ウィルパワー)をゼロにする。
朝の10分は、現場での1時間に匹敵します。これは「仕事をしている」のではなく、「現場で迷わないためのデバッグを事前に済ませている」のです。
「余裕」が、人を見る力をくれた
プレイングマネージャーとして、私は現場が好きです。しかし、管理職としての責務もあります。以前、心の余裕を失っていた時期には、思うようにメンバーに向き合えず、多くの離職を生んでしまいました。
今は違います。自分に余裕があることで、他人の表情、言動、行動の微妙な変化に気づけるようになりました。問題の兆しにいち早く対応できる。その積み重ねが離職率の低下やチーム満足度の維持につながっています。
➡️【観察力のデバッグ:心のノイズキャンセリング】
以前の私がスタッフの離職に気づけなかったのは、私の頭の中が「自分のタスク」というノイズで埋め尽くされていたからです。 自分の不安(不眠や焦燥感)で頭がいっぱいなリーダーは、部下の微細なSOS(ノイズ)を聞き取ることができません。
「時間管理」とは、頭の中の自分勝手なノイズを消し、周囲の信号を受信するための「心の空き容量(ヘッドルーム)」を確保する技術です。 私が優しくなって人の心が読み取れるようになったのではありません。私の脳の「受信感度」が正常化しただけなのです。
結果ではなく、循環を見る
世の中はぐるぐると循環しています。どこかに潜むバグを見つけ、それを一つずつ修正していく。すると不思議と全体の流れが良くなっていくのです。全てを大きく変える必要はない、循環を止めている引っかかりを取り除く、そんな感覚で管理業務にあたっています。
完璧を目指して自分を追い詰めていた頃には見えなかった“循環の視点”。それを手に入れた今、私は穏やかで前向きなサイクルの中にいると実感しています。
もし今、あなたが仕事に殺されそうになっているなら、それはあなたの能力が低いからでも、性格が弱いからでも決してありません。単に『自分を動かすシステムの設計』が古いだけです。
大丈夫。かつて不眠で死を恐れていた私でも、デバッグを繰り返すことで、今は笑って3人の子供を楽しく育て、自分の人生の舵取りをできています。 あなたの人生というプログラムは、いつからでも、どこからでも、書き換えることができます。迷ったらいつでもコメントお待ちしています。
