AI時代に「コピペ療法士」で終わる若手と、生き残るベテランの決定的な違い

中堅・管理職の悩み解決

先日、当院の医師からある課題を出されました。

「脳幹に障害がある患者さんの、前庭障害について少し詳しく調べてみてよ」

その患者さんを担当している新人の理学療法士(PT)、中堅の作業療法士(OT)、そしてなぜかたまたま近くに居合わせただけの私も含めた3人で、「各々調べて、持ち寄ってみよう」ということになりました。

結果から言うと、提出されたレポートの「文章の質」自体には、それほど絶望的な差はありませんでした(それもどうかと思いますが笑)

現代はChatGPTをはじめとする優秀なAIがあり、インターネットには論文が溢れています。学生や新人であっても、検索して要約し、もっともらしい1枚のテキストにまとめることは十分に可能です。彼らがその内容を本当に臨床レベルで理解しているかは別として、「情報の羅列」としては及第点でした。と同時に養成校や大学の先生たちの苦慮を慮ってしまいました。

しかし、決定的に違ったものがあります。それは「完了するまでのスピード」です。

私はおよそ30分でレポートを完成させました。一方、中堅は3日、新人の子は完成までに1週間近くかかっていたのです。

なぜ、これほどのスピードの差が生まれるのでしょうか。

もちろん、私もAIを使います。昔はそれらしい本を片っ端から持ち出したり、インターネットで検索したりしていましたが、今はゼロから医学書をひっくり返すような非効率なことはしません。しかし、AIがもっともらしい回答を出してきた時、ベテランの頭の中では瞬時に「ソースの裏付け」が行われています。

「あ、この概念はあの専門書の第3章に書いてあったな」

「この引用元は、あの著者の考え方だな」

過去に実際に分厚い専門書と格闘し、文字通り「一次情報(ソース)」に触れた経験があるため、AIが提示した情報の真贋判定が瞬時にできるのです。情報の「引き出し」が頭の中にあるからこそ、AIの回答に対して「この患者さんの場合は、ここにさらにあの文献の補足情報を足そう」と、独自の寄り道をして質を高めることができます。また、頭の引き出しになくても必ずどこから引用されているかを確認します。20年も働いていると熟読しないまでも何かしらの形で触れている文献や論文がたくさん存在するので、「あ、どこかで読んだことがあるな」とピンとくることも多々あります。

人間の頭の容量は変わりません。記憶力や単純な情報処理のスピードなら、むしろ若い世代の方が圧倒的に上でしょう。40歳を超えて、若い人との会話の速度についていけないと思うことも増えましたし。(まあ思考の速さと深さはトレードオフ的な要素もあるので、一概に遅くなることが全てにおいて良いというわけではありませんが)

しかし、彼らにはまだ経験による「引き出し」がありません。引き出しがないままAIに頼るとどうなるか。ただAIが出力した文字列を読み、それをコピペするだけの「単なる情報の横流し」になってしまいます。

そこには、「目の前の患者さんの、あの特有の症状とどう結びつくのか」という、臨床家として一番大切な「文脈の理解」が抜け落ちてしまうのです。

若いうちからAIを使いこなすことは大いに結構です。これからの時代、AIの活用はマストになってくるでしょうし、もうなっているかもしれません。しかし、AI「だけ」に頼り、分厚い専門書を読み込む苦労や、原著論文に当たる泥臭い作業を避けていると、非常に危険です。

なぜなら、自分の足で一次情報を取りに行った経験がなければ、いつまで経っても頭の中に「自分の引き出し」が作られないからです。

意味のある実用的な知識は、自分の頭で汗をかいてソースに触れた時にのみ定着します。その引き出しの数が、年齢を重ねた時に「圧倒的な仕事のスピード」と「AIの回答を患者向けにカスタマイズする応用力」に変わります。そのためには

検索すれば誰でも同じ答えを出せる時代において、あなたの価値は「どれだけ早く検索できるか」ではありません。

「集めた情報群から、目の前の患者の真実を見抜く目を持っているか」。そのためには

👉AIで概要を掴む

👉ソースを調べる

👉一次情報を元に対象者に【実践する】(ここが一番大切!)

👉「情報の羅列」がプロの技術に昇華していく

プロの技術は一度手に入れたら早々無くなることはありません、一生物であり、誰にも奪われない、あなただけのものとなります。一度手に入れてしまえば、対象者が変わるたびにあなたの価値がサステナブルに発揮され続けます。あなたを守る盾となり、職人としての武器になります。

AIのコピペ療法士になるか、自分の引き出しを持つ本物の臨床家になるか。

若いうちの泥臭いインプットの差が、10年後の決定的な実力差になる。これは間違いのない真理です。日々小さなことからコツコツやっていきましょう。

タイトルとURLをコピーしました