腰痛治療の新常識を知ろう

doctor examines woman s back 腰痛改善
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朝起きると腰が痛い、顔を洗う時腰が痛い、デスクワークや長距離運転が辛い、ゴルフやテニスなどのスポーツ、いろんなアクティビティをしたいのに腰痛が心配で控えている、お風呂と布団に入っている時だけが唯一痛みから解放される。。。このような悩みを抱えている人はとても多いのです。実際私も理学療法士になった初年度、技術がなかった上に重症の患者様を介助歩行したことで腰椎の椎間板ヘルニアになってしまったことがあります。理学療法士にも関わらず、恥を忍んで他病院のクリニックでリハビリを受け、どうにか手術は免れました。その際、自分なりに原因を追求し自分なりに腰痛改善のための運動療法について調べました。それから20年、リハビリ病院で働きながら幾多の腰痛患者に関わってきました。患者様と共に試行錯誤しながら培ったノウハウはみなさんのお役に立てるのではないかと思います。この記事を読んでくださっている方はおそらく腰痛に悩まされている方だと思います。いくつかの記事を読んでいただき、実践していただければ今の腰痛は確実に改善していくことでしょう。

腰痛の原因は腰にあらず

腰痛の原因は太ももにあった!

では、本題に入ります。とても重要なことなので再度、結論をお伝えします。腰痛の原因は腰にあらず。実は、腰痛の原因は腰にないことがとても多いのです。むしろ腰そのものに原因があることはほとんどありません。そんなバカなと思われるかもしれませんが、理学療法士の世界では誰もが知っている事なのです。読んでくださっている方々には、鍼灸や整体院に通って腰をマッサージしてもらったり、温めたりしてもらった時は楽になるのに、数日経つとまた痛みがぶり返してくる、そんな経験をしたことがあるのではないでしょうか。その理由はズバリ、原因が腰ではないからなのです(当然ですが腰に直接の原因があれば施術によって治る可能性はあります)。

体験談として、冒頭にお伝えしたように、私自身も椎間板ヘルニアになった経験があります。私の場合、ヘルニアになった原因はハムストリングスの短縮でした。スポーツ経験者の方は耳にしたことがあるかもしれませんが、ハムストリングスとは太ももの裏にある3つの筋肉のことです。

上の図は、人の下半身をお尻側から見た図です。ハムストリングスは骨盤の下の方にある坐骨と言う骨(座ったときに座面と左右のお尻があたる場所にある出っ張った骨)から始まって、膝の裏に繋がっています。このハムストリングスが短縮(短くなること)すると、立ってる状態では骨盤が後ろに寝た状態(後傾位)となります。通常、人の背骨というのは【生理的湾曲】というS字カーブ状になっています。頸椎(首)は前凸、胸椎(胸)は後凸、腰椎(腰)は前凸になっており、うまく負荷が分散するようにできています。

骨盤が後傾してしまうと腰椎の前凸カーブがなくなり、腰椎にかかる負荷が増えてしまいます。それにより腰椎の間のクッションである【椎間板】が潰れたり形状が変化してしまい、神経を圧迫してしまうヘルニアを起こしてしまうのです。私の腰痛の原因はまさに下の図の状態でした。

もし私が腰が痛いからといって腰に湿布を貼って、腰のマッサージを受け、電気を流したとしても、前述した【ハムストリングス】や【骨盤の後傾】という問題が解決されなければ腰にかかる負荷は変わりません。逆に言えば、ハムストリングスさえ長くすれば徐々に腰の負荷が減り、結果腰痛が改善するのです。事実、私はスポーツのウォーミングアップなどで行われる前屈でのストレッチを行ない、ハムストリングスのストレッチを行いました。1ヶ月程度お風呂上がりにストレッチを継続した結果、腰痛は完全になくなりました。完全にというと語弊がありまして、今も疲労が溜まると1年に1、2回少し痛みがでることがありますが、原因がわかっているのですぐに対処でき軽減させることができます。

腰痛は、腰以外の部分に原因があることが多く、その原因となる部分は人それぞれです。このブログを読んでくださっている方々はそれぞれ違う原因の腰痛を抱えています。そのため、このブログを通じて、まずは腰痛のメカニズムを知り、ご自身で体に起こっている問題点を見つけ、自分で腰痛を治していく、そのプロセスをお手伝いしたいと思っています。

まずは腰痛に対する誤解をなくして、腰痛が起こるメカニズムについての正しい理解をしましょう。

あなたの腰痛は何点?

さて、今後ブログを読み進めて知識を増やしていただき、問題点を見つけていくことになりますが、その前にまずは自分の痛みの程度を知りましょう。そこで大切になるのは『数値化』です。痛みを数字に置き換えます。理学療法で、最も有名なのはVisual Analog Scaleというものです。通称VAS(バス)と呼びます。とても簡単なもので、痛みを1から10(細かくしたい場合は100)の範囲の中で、今の痛みがどれくらいなのかを数値にするだけです。他にもNumeric rating ScaleやFace rating Scaleもあります。厚労省のサイトにも記述がありますので、参考にしてください。

まず、今の痛みを1から10の間で表すとどのくらいでしょうか。0は痛みがない、10は想像できる最大の痛み、全く我慢できないくらいの痛みです。直感で構いません。細かい数字の正確さよりは、今後の経過を見ていくために現状のスタート地点を定めておくという目的だからです。あまり深刻に考えすぎずに直感でいいのでパパッと決めましょう。時間帯によって痛みに違いがある場合、例えば朝起きた時に痛みが強いが午後になると痛みが少なくなる、という場合は両方の痛みを記載しておきましょう(朝6、昼3など)。その数値をスマホや手帳などどこでも構いませんが、必ず日付と数値を残しておいてください。

点数にすると継続できる!

少し脱線しますが、数値化はとても大切です。せっかく効果的な方法を行なっているのに、数値化していないと、その改善度を主観に頼るしかなくなるため、前進している実感が得られにくくなっていまします。なんとなく良くなっているかも、という程度の感覚では人は継続できなくなる恐れがあるからです。そのため、数値化しておけば、例えば7が5になっていれば一目で改善していることがわかりますし、痛みが完全に取れていなくても、確実に改善する方向に向かっていることがモチベーションの維持につながります。ちなみに理学療法士として働いていると、歩けるようになることを目指す患者様も少なくありません。リハビリが進み、理学療法士の視点から見ると確実に良くなっていても、その改善度に満足されない患者様も多くいます。麻痺があったり感覚障害があったり、精神的に不安定になっている人もいるので、改善を実感しにくい場合もあるかもしれません。そのような場合も、改善度を数値化することで、患者が自分の改善に気づくことができ満足していただけることがしばしばあります。

腰痛は2種類に分けられる

腰痛には2種類あります。1つは、診断名がはっきりとつけられる【特異的腰痛】、もう一つは原因が特定できない【非特異的腰痛】です。以前は腰痛症のうち特異的腰痛は2割、非特異的腰痛は8割、つまり腰痛のほとんどは原因がわからず診断がつけられないと言われていました。しかし2015年4〜5月に山口県の整形外科医院に腰痛で訪れた323例を対象に行われた実態調査では、実は78%は診断が可能だったと報告しています(引用:Suzuki H.et al Diagnosis and characters of Non-specific Low Back Pain in Japan:The Yamaguchi Low Back Pain Study.2016)。要するに、腰痛にはほとんどの場合原因は存在する、と言うことです。しかし読者の方には、近くの整形外科病院やクリニックで受診しても、はっきり診断名を言われなかった方も多いのではないでしょうか。その理由は、診断をするには神経にブロック注射を打つ必要があるからです。おそらくそこまでして診断名をつける病院は少ないでしょう。しかし前述した報告によって、ほとんどの場合腰痛に原因はあるのです。

腰痛の赤信号(Red Flags)と黄信号(Yellow Flags)とは?

このブログでターゲットにしている腰痛は【運動で改善が見込める腰痛】です。そのため、以下のような症状がある人は、まずは病院で診療を受けるようにしてください。

赤信号(Red Flags)→医師の診断を受けるべき

  • 発症年齢が20歳以下、または55歳以上
  • 時間や活動性に関係のない腰痛
  • 胸が痛い
  • 癌、ステロイド治療、HIVの既往がある
  • 栄養不良
  • 体重減少
  • 神経症状がある(足が痺れる、臀部や太ももが焼けるような痛みがある、足に触れたものの温度がわかりにくいなど)
  • 背骨が曲がっている
  • 発熱している

黄信号(Yellow Flags)→非特異的腰痛に分類され、運動による治療が困難

  • ストレス、不安、恐怖、鬱などの感情や経済状況や人間関係などの社会的な理由によるもの

上記の項目に当てはまらない人、そして診断を受けた上で運動を禁止されなかった人はブログに沿って実践に移ってください。

今回のまとめです

  • 腰痛の原因は腰以外にあることが多い
  • 腰椎にかかる負担を減らすために腰以外の部分にアプローチしていく
  • 原因となっている部分は人それぞれ
  • 今の痛みを数字に表してみよう
  • 腰痛にはほとんどの場合、明確に原因がある
  • 赤信号と黄信号に当てはまる人は、必ず診断を受けてから運動をしましょう

腰痛があると日常生活に支障をきたすだけでなく、何より元気がなくなってしまいます。動くことが億劫になると、人生の質(QOL:Quality of Life)が下がってしまいます。友人と遊んだり、ゴルフに行くことを控えてしまったり、変な話かもしれませんが夫婦生活に問題を抱えてしまうことだってあります。しかし、痛みがある以上、必ず原因はあるのです。このブログを読み進めて、実践していただければ腰痛は必ず改善に向かうと信じています。

今回はこの辺で締めたいと思います。今後はみなさんの腰痛の原因を探っていくプロセスになりますので、ぜひお楽しみください。

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