前回までで述べてきた仕事術についてまとめると、①2:8の法則で早めに仕事に取り掛かり、②マインドマイスターを使って思考を整理し、③陰山手帳を使ってスケジューリングをするところまでお伝えしました。これだけでもかなり仕事の効率はあがると思います。しかし、職場によっては毎日怒涛のように押し寄せる業務に飲み込まれ、それをこなしていくだけで時間が過ぎ去ってしまい、疲弊して帰路に着く、という人も多いと思います。今回お伝えしたいのは仕事術の4つ目、職場での日常業務として舞い込んでくる仕事の対処法についてお伝えできればと思います。特に中間管理職の方は、日々の仕事に追われストレスを抱える人も多いでしょう。これを実践すると業務が効率的になり自由な時間が増えるだけでなく人間関係、部下の育成など様々な面で副次的な効果も期待できます。
仕事を秒で仕分ける
かつての自分を振り返ってみると、一般職の時代は、自分が思うままに一生懸命仕事に没頭しており、ある意味ストレスは多くなかったのですが、中間管理職になった瞬間に、業務量が激増し、責任も増え、考えなくてはならないことが多くなるにつれストレスが増してきた記憶があります。朝職場についたら新たに生じた問題について報告があり、解決策を検討し、上司に報告、他部署との話し合いもしなければならない。ひとまず解決したと思いきやまた違う問題が、、、。管理職を担っている人は共感できるのではないでしょうか。ちなみに自分の周りの管理職の人を見ても意外とここでつまづいている人が多い印象です。状況を打破するために私が行なっていることを最後に一つお伝えします。
まずは仕事を2種類に分ける
仕事を緊急度と重要度によって4つの領域に分けてそれぞれ対応を変える、という下図のようなものはご存知の方もいらっしゃると思います。

https://s-kansa.co.jp/column/column6/ より引用
しかし結局のところ、仕事をしている時に私たちの時間を奪ってしまうのは大抵左側の2つの領域、つまり緊急性のあるものばかりだと思います。時間に追われれば追われるほど上図の右上にある「緊急ではないが重要なこと(例によれば人間関係作りや準備や計画など)」に思考が回りませんし、後回しになってしまいます。そのためにはまず緊急性のある仕事を必要最低限の時間と労力でもって片付けてしまおうという話です。
私は仕事は2種類に分けています。一つは【頭を使わない仕事】、もう一つは【頭を使う仕事】です。
頭を使わない仕事とは
【頭を使わない仕事】は読んで字の如く「考える必要がない仕事」のことを指します。必要だけど熟考するまでもない誰でもできる仕事は、意外に多く、仕事の半分はこれに当てはまるとに思います。例えば会議資料の印刷や準備、足りなくなった備品の発注などですね。これを意外と後回しにしている人が多いのが印象です。おそらく面倒だという印象を持ちやすいからだと思います。この【頭を使わない仕事】をさらに2つに分けます。一つは【誰にでもできる仕事】と【自分にしかできない仕事】です。少し具体的にお話ししていきます。
誰にでもできる仕事はすぐに他人へ任せる
誰にでもできることとは、
- 資料印刷
- 備品の発注
- 掃除・片付け
- 備品の修繕
などです。これは管理職であろうが、一般職であろうが誰にでもできるような仕事です。もしあなたが中間管理職であったなら、これらの仕事に時間を費やしてはいけません。なぜなら管理職の存在意義は他にあるからです。ではこれらの仕事が舞い込んできたらどう対処したほうがいいか。それはすぐに他人に任せるです。これが意外にできない管理職が多いです。確かに任せるのは気が引けるし、楽しようとしていると誤解される恐れもあります。当然のことだと思われますが、ここで重要なのは、感謝の意を言動で示すことです。部下にとって仕事を任されて上司にありがとうと言ってもらえることは、嫌なことでしょうか。振り返ってみると経験が浅かった頃の私は、上司とそのようなやり取りがあった時、とても嬉しかった記憶があります。「あ、自分にも任せてもらえるんだ」「自分も役に立てるかもしれない」と。もちろん他人にそう思ってもらえるためには普段からのコミュニケーションや信頼関係の重要性は言わずもがなです。どれだけ「ありがとう」と言われても、普段からいい関係でないなら逆効果にもなりかねないのはご存知だと思います。もし管理職の方であれば、このような仕事が舞い込んできた場合、すぐに他人に任せましょう。「ありがとう」「忙しいところ申し訳ない」と感謝の意と共に仕事を任せ、後日にも「先日はありがとう」「助かったよ」と労いの言葉をかけてあげましょう。きっと、部下も嬉しいですし、より強い信頼関係が構築させていくことでしょう。もちろん仕事によっては、任された部下の成長にもつながる可能性も大いにあります。仕事も片付き、部下も成長し、自分も時間が作れるわけですから三方よしになりますので、やらない手はありません。
自分にしかできない仕事はすぐに自分で片付ける
自分にしかできないことはその職場や役職によって異なるので、具体的には述べにくいのですが、自分の環境で考えてみると
- 当日のリハビリや業務のスケジューリングやリスケジューリング
- インシデント・アクシデントの報告を受け承認する
- スタッフの勤怠状況の確認・承認
- スタッフのシフトの作成
などが挙げられます。この類の仕事は面倒なのですが、後々に回すと必ず自分にツケが回ってきます。理由は当然、自分にしかできないことだからです。ここに分類される仕事は、基本的には頭を使いませんので、裏を返せば、実行する人の仕事のできるできないに関わらず結果は近しいものになる、とも言えます。大抵はこれらの業務はシステム化されているものが多くなっているということもあると思います。
しかし現実にはこれらを後回しにする人、または考え込んでしまう人が結構多いのです。たまに、「こんなことにどれだけ時間をかけているのだろう」、「前に頼んだあの件今頃になって返ってきたな」と感じる人がいませんか?ここに限られた時間を使ってしまうのは愚の骨頂です。なぜならこれらの仕事にはあまり人の考えが反映させる余地はありません。ですので、自分なりのやり方を突き詰めて、一瞬で終わらせる手段を考えておきましょう。この手の仕事は日々とめどなくやってきますので、自分なりの瞬時の解決方法が見出せれば、今後ずっと役に立ちます。必ず自分なりの最短ルートを見つけ出しましょう。例えば、インシデントの報告書を受けた時必ずみるべきポイントを決めておく、スタッフの勤怠の状況は金曜日の朝にだけ確認すれば大丈夫、などです。これだけでもかなり時短になりますし、頭の中が整理されます。事前に準備しておけば仕事が来ても慌てず対処できるようになります。その余裕がまた他者から見ると仕事ができる人だと思ってくれますし、その後もいい意味で頼られやすくなります。
頭を使う仕事とは
前項で述べた【頭を使わない仕事】をうまく対処するだけでもかなり時間が作れるようになると思います。しかし中間管理職の方が本来やるべき仕事は【頭を使う仕事】です。具体的には、
- 部署の目標設定
- 次回の会議議案の提案
- 職場の雰囲気を感じ取る
- スタッフに気を配る
などが挙げられます。これらは他人に任せることはできませんし、簡単に片付けてはいけない項目です。なぜならこれらはあなたが管理を任されている部署の明暗を分ける内容だからです。しかし意外とこれらの項目の対応を疎かにしてしまう管理職も結構多く見かけます。大抵ここに注力できない管理職は前述した【頭を使わない仕事】に没頭している傾向にあると思います。その心はおそらく【頭を使う仕事】は、とても抽象的で、正解がなく、結果も分かりにくいため、時間や思考を多く向けられないのではないか、と思っています。確かに職場の雰囲気といっても言葉にしにくいですし、どうすればよくなるのかなんて誰もわかりません。しかし中間管理職に任されている本当の仕事は確実にこの部分に存在すると思っています。
【頭を使う仕事】は環境や職種が違えば仕事内容が異なるので一概に言えませんが、共通して言える対処法は一つしかありません。それは失敗を繰り返し、その都度学んで、次に活かす、これだけです。トライアンドエラーあるのみです。失敗を恐れず、チャレンジしてみてください。離職者を減らすにはどうすればいいのだろう、今月もまた目標値を達成できなかったのはなぜだろう、など中間管理職の悩みは尽きませんが、一つずつ思考と実験を繰り返すほかないのです。これが中間管理職としての最大のやりがいでもあり、今回の最重要項目です。なぜ最重要かというと、前述した【頭の使わない仕事】をできるだけ減らす部署を作り上げることにこそ、時間が生まれる一番の要因があるからです。
例えばあなたは10人のスタッフがいる部署の中間管理職だとします。この10人が皆①生き生きしている、楽しんでいる、積極的、要領がいい、利他的である場合と②仕事がつまらないと感じている、消極的、要領が悪い、利己的である場合とでは何が違うでしょう。おそらく②に近づけば近づくほど、中間管理職であるあなたには仕事がたくさん舞い込んでくるのは明白です。もし①に近ければ、それぞれのスタッフが些細な仕事をその都度片付けてくれますし、必要な場合にのみ相談に来てくれます。中間管理職としてはこの上なく仕事がやりやすくなるのです。私が管理職になって10年以上経ってようやく気づいた大切な時間管理術の一つです。もちろんすぐには結果は出ませんが、意識して継続する人とそうでない人では、後々埋めようもない大きな差が生まれます。そしてこれに気づいている中間管理職は多めに見ても2割に満たないでしょう(私の環境に限った話かもしれませんが笑)。培った経験や自分なりのノウハウが後のあなたを助けてくれる最強の味方になるのも事実です。
まとめ
- 仕事には2種類あり、秒で仕分ける
- 頭を使わない仕事のうち誰でもできるものは任せる
- 頭を使わないが自分しかできないことは瞬時に自分で片付ける
- 中間管理職が使うべき時間は部署の成長のために
- 部署の成長が必ず自分を助けてくれる
数回に分けて、私が10年以上管理職を担ってきた中で導き出した仕事術をお伝えしました。もちろん今までたくさん失敗もしましたし、意味がなかったこともあったでしょう。紆余曲折しながらも、現在でも価値があると思って継続していることを厳選して4つ挙げさせてもらいました。簡単なことだけではないと思いますが、今私が心身ともにゆとりを持っていきいきと仕事に取り組めているのは、伝えたこられの仕事術がいい影響を及ぼしていると確信しています。自分の経験が少しでも皆さんお役に立てたら幸いです。