【予見の方程式③】真面目系クズPT × 真面目系患者。その「重苦しい沈黙」がリハビリを殺す

blank tags in close up photography 【指揮】部下を潰さない「現場マネジメント」
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リハビリ室の片隅で、一言も発さず、眉間にしわを寄せて手を動かすリーダーA君。以前の記事にも書いた真面目系クズ系PT。対する患者さんも、無言でA君のなすがまま。一見、ストイックに訓練に励んでいるように見えますが、私の目には「最悪の共犯関係」に映っています。

これが、マトリックス③「一方通行の自己満足リハビリ」です。

1. 方程式の解剖:なぜ「真面目」同士で停滞するのか?

このペアに流れる「重苦しい空気」の正体をひも解きます。

真面目系クズPT:型に依存し、相手を「モノ」として扱う

彼は教科書や研修で習った「型」を神格化しています。

  • 知性化(Intellectualization): 相手の感情や反応という不確かなものに向き合う不安を、理論や手技という「型」に逃げることで解消しようとします。
  • 認知的硬直性: 目の前の患者さんの「個別の反応」よりも、自分の「決めたプログラム」を優先してしまいます。彼にとって、リハビリは「対話」ではなく、ただの「作業」なのです。

真面目患者:良かれと思って「思考を停止」させる

「先生の言う通りにするのが一番だ」と信じ切っている真面目な患者さん。

  • 受動的依存: 先生が一生懸命やってくれているから、自分はそれに乗っかっていればいい。自ら探索し、失敗し、学ぶという「脳の回復プロセス」を放棄してしまいます。

2. 根本原因:誰が「ペダル」を漕いでいるか?

リハビリの本質を、私はよく「自転車」に例えます。 脳が回復するプロセスとは、患者さん自身が「考え、感じ、挑戦し、失敗し、修正する」という試行錯誤の連続です。

  • セラピストの役割: チェーンに油を差し、タイヤに空気を入れ、ギアを調整する「整備士」であるべきです。
  • 真面目系クズのシッパイ: 患者さんを荷台に乗せ、自分が必死にペダルを漕いでしまっている。

患者さんはただ景色を眺めているだけ。これでは、リハビリが終わった後にセラピストは「やった感」、患者さんは「やってもらった感」で満足しますが、肝心の「患者さんの漕ぎ方(脳の回路)」は一向に改善されません。

【シッパイマン流・停滞の方程式】

型の固執(真面目系クズ) × 思考停止(真面目患者) = 学習なき疲労(時間の浪費)

3. リーダーA君への「2つの荒治療」

私の直属の部下であるA君には、認知と技術の両面から厳しい指導を入れています。

① 「問い」によって【認知】を書き換える

リハビリ後、私は彼にこう問います。 「今日、あの患者さんは何を学んだ?」 「患者さんから、どんな言葉や気づきを引き出せた?」 この問いを投げると、彼はハッとして固まります。「自分が何をしたか」ではなく「患者が何を得たか」に視点を強制移動させます。

② 【技術】「トレードオフ」の意識を持たせる

リハビリにおける介入量と学習量は、しばしばトレードオフ(二律背反)の関係にあります。

  • セラピストが触りすぎ、動かしすぎ、持ちすぎれば、患者さんの「自ら動く」余地が消える。
  • 「あえて手を引く」ことで、患者さんの「探索」を引き出す。

「君が一生懸命やればやるほど、患者さんは一生懸命やらなくなるんだよ」 この残酷な事実を突きつけ、依存関係を断ち切らせます。

結びに:私たちが作るのは「依存」ではなく「自立」だ

患者さんは真面目です。何の罪もありません。 だからこそ、私たちが「先生がいないと何もできない体」にしてはいけないのです。

リハビリ室の静寂が「集中」なのか「思考停止」なのか。 リーダーは、その空気の密度を見極めなければなりません。もっと、泥臭く、もっと患者さんにも協力してもらって、失敗を楽しんでほしい。そして一緒に階段を一段ずつ登るような、そんなリハビリをしてほしいなと切に願っています。大丈夫、毎日少しだけ意識すれば、必ず誰にでもできるようになりますから。

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