「それ、本当に解決してほしいんですか?」部下の愚痴を「大問題」にすり替える上司の生態と、共感を「診断」に使う私の冷徹マネジメント

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プロローグ:看護師長の「正義」という名の越境攻撃

先日、同じ部署の看護師長からこんなクレームを受けました。

「リハスタッフの動きについて、うちの看護スタッフから不満が出ている。業務に支障が出るから、今すぐシステムを改善してほしい」

彼女の目は「現場の正義」に燃えていました。

しかし、基本的に何事にも疑ってかかる私は、「本当かな?」と首を傾げながら実際に現場へ足を運び、直下の看護リーダー層に事実確認(ファクトチェック)をしてみました。実態は「業務に支障が出るレベル」などでは到底ありませんでした。それは、現場スタッフの「ちょっと面倒くさい」という、ごくありふれた愚痴の延長線上にすぎなかったのです。

それなのになぜ、彼女は現場の些末な愚痴を「組織の大問題」にまで肥大化させ、他部署に突撃してくる「越境攻撃」を仕掛けてきたのでしょうか?

DNAに刻まれた『孤立拒絶』のOS

彼女が過剰な攻撃に出た理由は彼女の性格が悪いからでも、ヒステリックだからでもありません(隣の部署の看護師長はそんなことないからパーソナルな問題かもしれませんが、読者の中に共感してくれる人も絶対いると思うので書き進めます笑)。それは太古の昔から、女性が集団で家庭やグループを守り抜くために磨き上げてきた「生物学的な生存本能(OS)」の現れなのです。

原始の時代から、女性にとって「集団からの孤立」は文字通り「死」を意味しました。そのため、彼女たちの脳のOSには「矢面に立つことへの徹底した逃避」と「集団内での孤立の拒絶」が深くプログラミングされています。

もし師長が、部下からの不満を「それは単なる君たちのわがままだよ」と一蹴してしまえば、どうなるか。「私たちの気持ちを分かってくれない冷たい上司」として、自分が攻撃の標的(仲間外れ)にされるリスクがあります。

そのリスクを回避し、集団内での自分のポジションを守るために、彼女たちは無意識にこう変換します。

部下の不満を「組織全体の正義」という盾にし、他部署という「外敵」へ責任を転嫁する。

これこそが、彼女たちが部下を守りつつ、自分も傷つかないための、DNAレベルの防衛ムーブなのです。

「共感」は優しさではなく、高性能な「診断薬」である

この「女性社会のOS」を理解していないと、他部署からのクレームや、自部署の女性部下からの訴えを真に受けてしまい、上司は疲弊します。

私は部下から相談を受けた際、自分のCPUをいきなり「解決モード」には絶対しません。リハ職ならお分かりでしょう。評価(アセスメント)の前に介入するのは、無能な対処療法者のやることです。

マネジメントにおける最初のアセスメント。それが「共感リトマス試験紙」です。

部下の訴えには、決定的に異なる2つのパターンが存在します。

カテゴリOSの正体相談者の本音
パターンA:解決型【物理的欠陥】「本当に困っている。具体的な打開策をくれ」
パターンB:共感型【承認欲求の飢餓】「このモヤモヤを分かってほしい。スッキリしたい」

この見極めを誤ると、地獄が始まります。

  • A(解決型)に共感だけする → 「何のアドバイスもくれない脳なし上司
  • B(共感型)に解決策を出す → 「話を聞いてほしいだけなのに、やたら口を出すうるさい上司

「解決してほしい」と叫びながら、実は「同意してほしい」だけ。この矛盾を見抜かなければなりません。まず自分のOSをこう書き替えましょう「人は本音を言っているとは限らない」。恥ずかしいことに私も経験が浅かった時はそれが全く分からず、脳なし上司でうるさい上司に成り下がっていました。きっかけは「私も上司に本音なんて言ってないな」と気づいてからでした。これは自分だけではないはず、と思いいろんなスタッフと面談などを通じて自分なりに考えた方法が次になります。

診断の手順:心を無にして、ただ頷き続けろ

見極め方は拍子抜けするほど簡単です。

「まず、しっかり傾聴して、徹底的に共感してみる」。それだけです。それ、どこにも書いていることじゃん、と思いますよね。

「それは大変だったね」「嫌な思いをしたね」と、共感の言葉という「麻酔」を打ち続け、時間の経過とともに相手の反応を観察してください。

  1. 表情が和らぎ、口調が落ち着く場合→ 診断確定。【パターンB:単なる愚痴】です。彼女は「上司に気持ちを理解された」ことで既に報酬を得ています。ここでシステムを変えるのは、健康な体にメスを入れる「過剰診療」です。「話してくれてありがとう」で終わらせましょう。ここで、具体的な解決策やシステム変更まで過剰に口に出しても問題はありません。もし彼女が、「いや、そこまでしなくても」というリアクションになったら、パターンB確定です。
  2. どれだけ共感しても、表情が晴れず、沈黙が痛い場合→ 【パターンA:実害アリ】です。感情の処理は終わっているのに、現実が変わっていないことに不満を感じています。誰もが口を揃えて「問題だ」と言うのであれば、ここで初めて上司は重い腰を上げ、「メス(具体的なシステム改善)」を取り出せばいいのです。ただし、いざシステムにメスを入れようとすれば、そこには必ず既存のルールや他部署との「摩擦(コンフリクト)」が生じます。 その痛みを恐れてメスを置くなら、あなたは結局「いい人」止まりです。必要なコンフリクトを意図的に起こし、組織のバグを修正する具体的な戦術については、こちらの記事で詳しく解説しています。

結び:一流は「ポーズ」で現場の平和を守る

さて、冒頭の看護師長への対応に戻りましょう。

現場のリーダーに確認し、それが「パターンB(単なる感情のモヤモヤ)」の延長だと診断した私は、システムには一切手を触れません。

その代わり、師長には「貴重なご意見ありがとうございます。リハ部内でも共有し、改善に向けた検討を行います」という『ポーズ』だけをプレゼントします。

彼女は、本当にシステムが変わるかどうかよりも、「私が他部署にガツンと言ってやった(=部下のために動いた)」という実績と免罪符が欲しいだけなのです。これで彼女のメンツは保たれ、看護スタッフも「師長が言ってくれた」と溜飲を下げます。本当に解決して欲しかったら、1週間もしたら「あの件、とうなっていますか?」「全然、解決されておらず部下が困っています」ということになります。そしたら、パターンBからAに再評価すればいいだけです(本当にAだった場合は解決していなかったのは事実なので、しっかり謝罪しましょう!)。脱線しますが、私の経験上、ここまで分析すると頭を下げることに対してプライドがなくなります。この分析なくしてただ否定されると人は頭を下げにくくなります(👈これに関してはこの記事をぜひ読んでみてください)

想像してください。ここまで想像を膨らませ、分析し、それが間違っていたとしても次はこうすればいい、と次の手を持っていれば別に頭を下げてもあなたの価値や気持ちは全く下がることはありません。「いやあ、意外と問題だったんだなあ」くらいのもんです。これは管理職として働く以上、持っておきたいマインドだと思います。強いマインドは、いくら自己啓発本を読み込んでも手に入りません。人や集団の心理を読み解き、自分なりの打開策を持つことに他なりません。

最後に

「上司に悩みを聞いてほしい、共感してほしい」というのは、プロである前に人間として当たり前の感情です。その感情を頭ごなしに否定するのではなく、「共感」という名の診断薬で相手のニーズを切り分ける。

現場のシステムを無駄に汚さず、相手のメンツを立て、組織のCPUを温存する。

「冷たい上司」「ずる賢い上司」と言われても構いません。全員の感情を真に受けて現場を疲弊させる「無能な善人」になるよりは、この「賢い二枚舌」を使う方が、100倍組織のためになるのですから。

💡この記事の他にも、人間関係をハックする方法をこちらにまとめています

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