「それ、本当に解決してほしいんですか?」部下の愚痴を「大問題」にすり替える上司の生態と、共感を「診断」に使う私の冷徹マネジメント

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他部署の上司から、こんなクレームを受けたことはないでしょうか。

「リハスタッフの動きについてうちの部署から不満が出ている。業務に支障が出るから、今すぐシステムを改善してほしい」

相手は「現場の正義」に燃えています。しかし、現場に足繁く通い、クレームが出た部署のリーダー層に事実確認すると、その実態は「ちょっと面倒くさい」という、ごくありふれた愚痴の延長線上にすぎないことがよくあります。

なぜ、彼(彼女)らは些末な愚痴を「組織の大問題」にまで肥大化させ、他部署へ攻撃を仕掛けてくるのでしょうか。

今回は、感情的なクレームを「共感」というフィルターで診察し、組織のCPUを疲弊させないための戦略的アプローチを解説します。


なぜ「個人の愚痴」が「組織の正義」に変換されるのか

他部署や部下が過剰な攻撃に出る背景には、生物学的な生存戦略(OS)があるようです。

集団内での孤立を極度に恐れる心理が働くと、人は無意識に「集団内での立場維持」を優先してしまいます。もし部下や関係者の不満を「それは君たちのわがままだ」と一蹴すれば、自分が「彼らの気持ちを汲まない冷たい人間」として集団から排除されるリスクが生じるからです。

そのため、彼らは無意識のうちに以下のような変換を行います。

「部下・身内の不満」を「組織全体の正義」という盾に置き換え、他部署という「外敵」へ責任を転嫁するのです。

これは彼らが自分自身と集団を守るための、DNAレベルの防衛ムーブと言えます。この仕組みを理解していないと、私たちはその「正義の仮面」を真に受けてしまい、疲弊する羽目になってしまいます。

➡️【デバッグ】「共感」は優しさではなく、高性能な「診断薬」である

部下や他部署からの訴えに対し、いきなり「解決モード」で突入するのは、リハビリ専門職として最も避けるべき「評価(アセスメント)なき介入」です。

マネジメントにおいても、まずは「共感リトマス試験紙」を使って、相手のニーズを切り分けなければなりません。

カテゴリ相手の本音適切な対応
【解決型】「本当に困っている。打開策が欲しい」即座にシステム改善(メス)を入れる
【承認型】「モヤモヤを分かってほしい。スッキリしたい」徹底的な傾聴(麻酔)で終わらせる

この見極めを誤ると、「解決策が欲しいのに共感しかくれない無能」か、「聞いてほしいだけなのに論破してくるうるさい管理職」というレッテルを貼られてしまいます。

「解決してほしい」と叫びながら、実は「同意してほしい」だけであるケースは、驚くほど多いのです。

診断の手順:心を無にして「麻酔」を打て

見極め方は拍子抜けするほど簡単です。

まず、しっかり傾聴し、「それは大変でしたね」「嫌な思いをしましたね」と共感の言葉という「麻酔」を打ち続けてみてください。

  • 表情が和らぎ、会話が落ち着く場合: 【承認型】です。相手は上司に気持ちを認められたことで報酬を得ています。ここで過剰なシステム変更を行うのは「過剰診療」です。共感で留め、労って終わらせるのが組織のためになります。
  • 表情が晴れず、沈黙が続く場合: 【解決型】です。感情の処理は終わっているのに、現実のシステムに実害がある状態です。ここで初めて、重い腰を上げて「メス(システム改善)」を取り出しましょう。

一流は「ポーズ」で現場の平和を守る

冒頭の看護師長への対応に戻ります。

分析の結果、それが【承認型】の延長だとわかれば、システムには一切手を触れません。その代わり、「貴重なご意見ありがとうございます。リハ部内でも共有し、改善に向けた検討を行います」という『ポーズ』だけをプレゼントします。ただ承認して欲しいだけの内容であれば、その頃にはクレーム(愚痴)を言っただけの他部署ももう忘れていることが本当に多いのです。過去には、私の同僚の管理職は、真面目だったが故に全ての愚痴、クレームに対応しすぎてしまってリハ部の混乱を招いてしまいました。その結果、他部署が「困ったらなんでもいうことを聞いてくれる」と勘違いして、事あるごとにクレームを言う、という悪循環が生まれてしまいました。これは避けなければならない事象です。

そして診断の結果【解決型】であった場合、つまり本当に解決して欲しければ、1週間もすれば再度の問い合わせが来るはずです。その時初めて、パターンを再評価すればいいのです。もし緊急を要す場合は、すぐ対応しないといけないのでそこには判断が必要ですが。

そして、大切なことは、この診断分析プロセスなしに「それは無理です」と二つ返事で頭ごなしに否定するから、余計な摩擦が生まれてしまうのです。いずれにしても感情は抜きにして、まずは共感という麻酔から開始してみてください。

結び:強固なマインドは「分析」から生まれる

「上司に気持ちを分かってほしい」というのは、人間として当たり前の感情です。その感情を頭ごなしに否定するのではなく、「共感」という名の診断薬でニーズを切り分けていきましょう。

現場のシステムを無駄に汚さず、相手のメンツを立て、組織のCPUを温存する。

たとえ「ずる賢い」と言われても構いません。全員の感情を真に受けて現場を疲弊させる「無能な善人」になるより、この「賢い二枚舌」を使う方が、100倍組織のためになるのですから。

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