「文句ばかりの上司」が孤立する理由。人間関係をハックする「信頼残高」の増やし方

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1. 信頼破産している上司(反面教師)

私には、少し残念な上司がいます。 口を開けばいつも不満ばかり。部長がどうの、看護部がどうの、医師がどうの。常に他者を批判しています。当然、他部署との関係性は良くありませんし、周囲からも距離を置かれているのが現状です。

なぜ彼は孤立してしまうのでしょうか。 それは彼が、人間関係という銀行口座から**「信頼」を引き出し続けているだけで、1円も「預け入れ(投資)」をしていないから**です。

人間関係は「鏡」であり、同時に「銀行口座」でもあります。 今回は、中間管理職として板挟みになりがちな私が実践している、「打算的ですが最強の処世術」について共有したいと思います。

2. 感情論ではなく「システム」で考える

以前の記事でも触れましたが、回復期病棟において「リハビリ部 vs 看護部」の対立は“あるある”です。 「攻めのリハビリ」と「守りの看護」。目的が異なる以上、コンフリクト(衝突)は組織にとって健全な機能でもあります。しかし、それが行きすぎて感情的な対立になり、現場が混乱してしまうのは明らかな「バグ」です。

そこで私が常に大切にしている考え方があります。 それは、「相手に恩を売る(=投資する)」ということです。

「恩を売る」と聞くと、少し打算的に聞こえるかもしれません。誤解を恐れずに言えば、私は多少、打算的です。 人は誰しも自分が一番かわいいものです。私もそうです。しかし、全員が「自分優先」で動いてしまうと、組織の通信は遮断されてしまいます。 だからこそ、あえて「相手を最優先」し、相手が助かる行動をとってみてください。すると、驚くほど大きなリターンが返ってきます。自分が困った時、必ず相手は力になってくれるはずです。

これを心理学では「返報性の法則」と呼びます。私はこれを「組織運営のアルゴリズム」だと捉えています。

3. 実例:コロナ禍での「巨額投資」

このアルゴリズムが機能した、象徴的なエピソードがあります。 当院でコロナウイルスのクラスターが発生した時のことです。

当時、現場は極限状態でした。特に看護部の業務負担は激増し、空気は常にピリピリしていました。以前からくすぶっていたリハビリ部と看護部の対立は決定的になり、「もう修復不可能ではないか」と思えるほど関係は冷え切っていたのです。

その時、私は何をしたか。 徹底的に「看護部の雑務」を引き受けました。 リハビリ業務の合間を縫って、ゴミ捨て、搬送、看護スタッフの助手。とにかく「看護師がやりたくない仕事」を黙って処理し続けました。

これは「優しさ」ではありません。 組織を回すための「潤滑油の注入」であり、将来のための「事前投資」です。 リハスタッフも看護師も、同じ病院を守る機能の一部に過ぎません。職種上の業務量の偏りを、私がバランサーとして調整しただけのことです。

結果はどうだったでしょうか。 あのクラスター以降、看護部との関係は劇的に改善しました。今では無理な相談も「〇〇さんの頼みなら」と通るようになっています。 恩や信頼は「お金」と同じです。借りてばかり(文句ばかり)いれば愛想を尽かされますが、困った時に貸してくれる(助けてくれる)人との関係は、決して悪くなりません。

●バグ報告への回答(Q&A)●

この話をすると、必ず懐疑的な意見が出ます。ここでデバッグ(回答)しておきましょう。

Q1. それは偶然いい人だっただけでは? A. 偶然ではありません。普遍的なプロトコルです。 エビデンスはありませんが、自分が逆の立場ならどうでしょうか? 苦しい時に助けてくれた人を、無下に裏切れるでしょうか? 少なくとも、攻撃しようという気は起きないはずです。これは人間の心理OSの根幹に書き込まれたプログラムだと言っていいでしょう。

Q2. もし裏切られたら損ではないですか? A. その時は「損切り」すればいいだけです。 「ギブ」しても返さない、あるいは仇で返す人間だと分かった時点で、それ以上関わる必要がないと判断できます。不毛な時間を費やさずに済んだのですから、むしろラッキーです。 「投資不適格」な相手とビジョンを共有することは不可能です。早めに距離を置く(損切りする)のが、リスク管理の鉄則です。

4. 明日からできる「信頼積立」3つのプロトコル

とはいえ、好きでもない相手に優しくするのは難しいですよね。 そこで、感情を排して実行できる3つの手順を用意しました。

STEP 1:5分限定の「マイクロ・ギブ」

重い作業を肩代わりする必要はありません。 ゴミ捨て、エレベーターのボタン押し、共有部の整理など。こちらの業務を圧迫しない範囲(5分以内)で、相手の負担が軽くなることを見つけて実行してみてください。 (……偉そうに書いていますが、これを書きながら「家庭では妻にもっとマイクロ・ギブをしなければ」と私自身も反省しています。。。)

STEP 2:「領収書」を切らない

「やってあげた」という顔をしないことです。これが見返りを求める人間(私もやりがち)にとって一番難しいところです。 ここでのコツは、「投資先を脳内で変換する」ことです。 嫌いな上司のためだと思うと腹が立ちますが、「これをやっておけば患者さんのためになる」「早く片付ければ自分が早く帰れる」と考えてみてください。 結果的に相手が得をしたとしても、それはあくまで「副作用」だと思えばいいのです。

STEP 3:嫌いな相手は「実験台」にする

それでも生理的に合わない相手はいます。 そんな時は感情のスイッチを完全に切り、「返報性の法則のテスト被験者」として接してみてください。 私の経験上、返報性が全く機能しない人間は全体の1%程度です。その1%に当たったら、事故だと思って諦めればいい。残りの99%には必ず通用します。

5. 明日の「5分」が未来を救う

人間関係に悩んだら、一度自分の「口座残高」を確認してほしいと思います。 文句(引き出し)ばかりになっていないか? 投資(ギブ)が不足していないか?

まずは明日、誰かのために「5分」だけ使ってみてください。 あなたのその行動は鏡に映り、必ず利子がついて、あなたのもとに返ってくるはずです。

STEPアクションマインドセット
STEP 1観察「あの部署、何にイライラしてる?」を探す(ボトルネック検知)
STEP 2介入「5分以内の雑用」を黙って片付ける(マイクロ・ギブ)
STEP 3放置「これは患者のため(自分のため)」と変換し、見返りを求めない(領収書不要)
結果回収自分が困った時、彼らが最強の味方になる

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