プロローグ:かつての私は、臆病なイエスマン
「上司に嫌われたくない」
かつての私は、その一心で働く「都合のいいイエスマン」でした。上司と仲良く談笑できる同僚を羨み、顔色を伺い、自分の意見を飲み込む日々。しかし、ある日気づきました。「都合のいい部下は、都合よく使い捨てられる」と。私が手に入れたかったのは、仲良しごっこではありません。
「上司に認められつつも、舐められない。文句を言わせないが、頼りにされる」
そんな、組織内での【不可侵ポジション(聖域)】です。こんなこと無理だよ、うちの上司がわかってくれるはずがない、と皆さん思ったのではないでしょうか。大丈夫です、私も含めどこの上司も似たりよったりです。不可侵ポジションは必ず存在します。そこに少し時間をかけて辿り着ければ、上司からのプレッシャーは皆無になります。これは、才能や性格の話ではありません。私が20年かけて構築した、再現可能な「生存戦略」の記録です。
1. 実績は「質」ではない。「量」で履歴書を埋め尽くせ
「結果を出せ」と言われると、私たちはついホームラン(大成功)を狙おうとします。しかし、それは間違いです。会社や上司が見ているのは、実は「質」よりも「量(行動の跡)」です。
学会発表
委員会の役割
新人指導の担当
面倒な係のリーダー
これらを「成功させよう」と気負う必要はありません。「やった」という事実を残すだけでいいのです。失敗しても「経験」という実績になります。一度やっておけば、来年も再来年も「あいつは経験者だ」として名前が挙がり続けます。例えば学会発表を一度経験したとしましょう。結果があまり振るわなかったとしても、1年後など誰も覚えていません。ただ発表したと言うことは数年は覚えられています。と言うよりその時期になると名前が再浮上してくるという感じです。もし翌年部下が1人発表することになったら、もしかしたら指導役として名前が挙がるかもしれません。経験がない人には任せるわけにはいきません。もし挙がらなかったら自分から名乗り出てもいいわけです。実績は、複利のように積み上がります。何の実績もない部下の言葉に、説得力は宿りません。まずは「数」で黙らせる土台を作ってください。
2. 上司に媚びるな。「部下」という票田を確保せよ
自分に擦り寄ってくる部下を可愛がる上司。そんな人を相手にする必要はありません。本当に尊敬すべき上司は、「上司の顔色を見る部下」よりも「現場(患者・社会)を見ている部下」を評価します。視点を180°変えましょう。上司を見るのではなく、部下に認められることに全力を注ぐのです。
部下に愛情を注ぎ、敬い、時には厳しく指導する。そうして「現場のスタッフから絶大な信頼を集めるリーダー」になってしまえば、上司はあなたを無視できなくなります。なぜなら、あなたを敵に回すことは、現場のスタッフ全員を敵に回すことと同義になるからです。
これが、組織における最強の防具になります。
3. 相槌はいらない。「目」で情報をダウンロードしろ
精神論に聞こえるかもしれませんが、これはテクニックです。上司や講師が話している時、絶対に目を切らないでください。内容がわからなくてもいいし、同意できなくてもいいのです。ただひたすらに、相手の目をじっと見つめ、「あなたの言葉を一言も漏らさず聴いています」という姿勢(圧)を送り続けるのです。
管理職の立場になるとわかりますが、相手が「本気で盗もうとしている目」か「その場しのぎの目」かは一瞬でバレます。言葉巧みな相槌よりも、沈黙したままの「強い視線」。これが、上司に「こいつはタダモノではない」と思わせる無言のメッセージになります。
4. 【最重要】上司と同じ土俵で戦うな。「隙間産業」で聖域を作れ
ここが、多くの人が陥る罠です。上司に認められようとして、上司の得意分野で頑張っていませんか?それは危険です。上司からすれば、あなたは「自分の地位を脅かすライバル(ニューカマー)」に見えてしまい、無意識に攻撃対象にされる可能性さえあります。それは避けなければなりません。目指すべきは【聖域(サンクチュアリ)】です。
勝利の方程式:
上司の弱点 ✖︎ 自分の得意 = 攻撃されない聖域
上司が「他部署との交渉」が苦手なら、あなたがやる。上司が「装具の知識」に疎いなら、あなたが講習会に出てスペシャリストになる。上司が「若い女性スタッフへの対応」に困っているなら、あなたが相談役になる。「上司がやらなきゃいけないとわかっているけど、できないこと」。ここをあなたが埋めるのです。
そうすれば、上司にとってあなたは「自分の弱点を補完してくれる、手放せないパーツ」になります。これこそが、文句を言わせない最強のポジションです。自分の信念や性格を曲げてまでやる必要はありません。上司の弱点を見て、自分がやれそうなところで全然OKです。上司の弱点がわからないわけはありません。どの時代、どの世界でも上司の弱点を一番知っている(陰で愚痴っている)のは部下に決まっているのですから。そのダメポイントを自分の聖域に変えてしまうのです。
5. 謝罪は「負け」ではない。「器」を見せるダメージコントロールである。
トラブルが起きた時、最も評価を下げるのは何でしょう。それは「言い訳」です。逆に、最も評価を上げるのが「戦略的謝罪」です。自分に100%の非がなくても、トラブルに関わっているなら、まずは謝りましょう。
「部下の能力を見誤っていた私の責任です」
「予兆に気づいて声をかけられなかった私の配慮不足です」
そこまで背負えるかどうかが、リーダーの器です。多くの人は保身に走ります。だからこそ、潔く頭を下げられる人間は、それだけで「あいつは器がデカい」「責任感がある」と差別化できます。謝罪は、マイナスではなくプラスの評価に変えられるのです。私自身よく「責任感がある」と言う評価を上司や部下からもらうことが多くあります。ですが「責任感がある」はただのイメージでしかなく、客観的なデータはありません。おそらくこの「戦略的謝罪」「言い訳しない」を実践してきたからだと分析しています。「損した気分になる」のは最初のうちだけです。自分の株が急上昇するのをゆっくり待ちましょう。
エピローグ:都合のいい「駒」になるな
これら5つを実践した時、あなたはもう「臆病なイエスマン」ではありません。
上司からは一目置かれ、部下からは信頼され、自分の聖域を持った「扱いにくいが、代わりのいないプロフェッショナル」になっているはずです。
組織に使われるのではなく、組織をハックして、自分の居場所を自分の手で作り上げてください。
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