「自立させたいPT」vs「転倒させたくないNs」。永遠の対立を終わらせる『魔法の問いかけ』

see saw in snowy forest setting in winter マネジメント
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この記事は2026年2月5日デバッグ済みです

現場の永遠の課題「正義の衝突」

現場の中間管理職として働いていると、避けては通れない「職種間の意見対立」があります。 先日も、私の職場でこんな「あるある」な衝突がありました。

理学療法士のA君:「身体機能が上がってきたので、移乗動作を介助なしの『自立』にステップアップさせたいんです」
看護師のBさん:「病棟ではまだふらつきがあるし、転倒のリスクが怖い。まだ早いです。というよりも将来的にも自立は厳しいのでは」

  • PTの正義:「機能回復」が使命。少しでも自立させたい。
  • Nsの正義:「安全と生活」が使命。転倒事故は絶対防ぎたい。

どちらも患者さんのことを想っての正義です。しかし、この狭間で「自立か、介助か」という二択(具体論)で議論すると、必ず平行線になります。 どちらかの意見を立てれば、もう一方が「自分の専門性が否定された」と感じてしまう。

そんな膠着状態を打破するために、私が使った「たった一つの思考法」をご紹介します。

「具体と抽象」という視点のズーム機能

ヒントをくれたのは、細谷勲さんの名著『具体と抽象』でした。 少し難しい言葉ですが、現場風に翻訳するとこうなります。

議論が対立している時、たいていは「具体(手段)」のレベルで殴り合っています。 「リンゴの絵を描いて」と言われれば全員がリンゴを描けますが、「果物の絵を描いて」と言われると、バナナやブドウなどバラバラになりますよね。 これと同じで、具体的な「やり方」にこだわると、職種ごとの違いが際立ち、対立が生まれるのです。

今回のケースで言えば、「自立」も「見守り」も、実はただの「具体的なツール(手段)」に過ぎません。 ツール同士を戦わせても答えは出ません。必要なのは、視点を一段階上げる(抽象化する)ことです。

マネジメント介入:「手段」ではなく「目的」を見る

私は二人の議論を止めて、こう問いかけました。

「今は『できる・できない』という具体的な手段の話で止まっています。 そうではなく、『その患者さんが施設に退院した後、どんな生活を送ってほしいか』という一段上の目的(抽象)について、もう一度話し合ってみてくれませんか?」

PTがこだわる「歩行」も、Nsがこだわる「安全」も、全ては「患者さんがその人らしく生きる」ための手段でしかありません。 「今、転ばないこと」と「今、歩けること」。 その先にある「退院後の未来」にカメラの視点を引いたとき、二人の景色はどう変わるでしょうか。

視点を上げたら「第三の正解」が見えた

数日後、看護師Bさんから驚くべき提案がありました。

「あの方、昔から人の世話をするのが好きだったそうです。だから『空き時間にゴミ箱を折って、食堂の席に配る係』をお願いするのはどうでしょうか? これなら次の施設に行っても『自分の役割』ができて、やりがいに繋がると思います」

さらにこう続きます。 「移動に関しては、その役割を果たすために、まずは『見守り』で食堂まで歩く練習から始めましょう。PTのA君とも話し合って、歩行時の注意点を全スタッフで共有することにしました」

その後、もちろんA君は喜んで看護師全員に歩行介助時の注意点を伝えたとのことで、私も病棟で本人が看護師と一生懸命歩行している姿を見かけます。

  • これは「自立か介助か」で争っていた時には出なかったアイデアです。
  • 「役割とやりがいのある生活」という上位の目的(抽象)で合意したからこそ、「ゴミ箱配り」という新しい具体策が生まれました。

まとめ:対立したら「空」を見上げよう

議論が平行線になったら、それは「具体の谷」で迷子になっている証拠です。 そんな時は、顔を上げて「抽象の空」を見上げてください。

「そもそも、なんのためにやるんだっけ?」 「患者さんの3ヶ月後の笑顔は、どんな状態だっけ?」

目的(抽象)のレベルで合意できれば、対立していた相手は「敵」ではなく、同じ山頂を目指す「パートナー」に変わります。

明日、職場で意見が食い違ったら、ぜひこの魔法の言葉を使ってみてください。

「手段の話は一旦置いておいて、目的の話をしませんか?」

レイヤー議論の内容状態アクション
上位・抽象・Whyどんな未来・生活を作りたいか?合意・握手ここを最初に決める
下位・具体・How「自立or介助?」
「歩行器or杖?」
対立・争い上層が決まってから選ぶ


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