腰痛を改善するためにインターネットで調べて、書いてあるストレッチや筋トレをやってみても結局長続きしないし、よくならない。こんなことで悩んでいませんか?おそらくほとんどの方に経験があるのではないでしょうか。効果がない、また継続できない理由は、インターネットに記載されている治療法は【誰にでもちょっとだけ当てはまるおおまかな治療法】だからです。スーツで例えると、レディメイド=既製品のようなものです。ピッタリ合う人もいればあまりしっくりこない人がいるのも当然です。このブログの目的は、みなさんが自分だけの問題点や自分に合った治療法を見出すことです。つまり自分だけのオーダーメイド治療法です。最適な治療法が見つかれば今後の人生に大きな助けになることは間違いありません。以前の記事で書きましたが、私自身も疲労が溜まると腰痛をぶり返すことがありますが、治療法がわかっているので、すぐに復活することができます。これは精神衛生上とてもいいことだと実感しています。今回の記事を読んで実践していただき、あなたなりの治療法を見つけ出しましょう。
まず今回のターゲットは【スウェイバック姿勢】です。腰痛の原因となる大きな要因の一つですので一発目はこれから解説していきたいと思います。
腰痛の人に多い姿勢、スウェイバック姿勢とは
スウェイバック姿勢とは
スウェイバック姿勢とは以下のような姿勢をいいます
- 骨盤が後傾(まれに前傾している場合もある)している
- 骨盤と股関節が足よりも前に出ている
- 背中が丸まっており、頭が胸よりも前に出て顎が上がっている

Adriano Pezolato. infiltration in the lumbar multifidus and erector spinae muscles in subjects with sway-back posture.Eur Spine J .2012より引用
なぜスウェイバック姿勢だと腰痛になるのか
スウェイバックは筋肉ではなく靭帯や関節などの構造で体を支えているため特定の部分にだけ負荷がかかり過ぎてしまいます。その負担がかかった靭帯や関節が限界を超えると痛みを引き起こしてしまいます。
人の体はたくさんの骨でできています。足の骨の上に脛(すね)の骨が、その上に腿(太もも)の骨、さらにその上に骨盤、背骨、と積み木のように重なっています。そのまま動かなければ骨の積み木は安定していますが、生きていれば当然動きが加わります。物を掴もうとすれば手の骨は前に動きますし、歩けば全ての骨が前方に動きます。また地球上には重力が働いていますので、少し動いただけで骨の積み木は崩れる力が働いてしまいます。それを倒れないようにしているのが筋肉や靭帯、関節を包んでいる関節包と言われる組織などです。筋肉で支えている場合は関節に柔軟性があり、変化に富んでいるため良好な姿勢になります。しかし運動不足などで筋肉が硬くなったり弱くなることで、筋肉を使わずに靭帯や関節包の張りだけで支え続けてしまうと、特定の部分に負荷がかかり続けてしまい、痛みが出てしまうのです。長時間張り続けたロープの摩耗が早いのと同じです。
また腰やお腹周りの筋肉はコルセット状のようになっており、筒状にぐるっとつながっています。筋肉が働くとコルセットを締めたようになり、体幹が安定します。これを【腹圧が高まっている状態】と言います。腹圧が高まって体幹が安定すれば背骨にかかる負担は軽減します。逆にぽっこりお腹や前に出ているお腹になると腹圧が低下し、腰椎にかかる負荷が増大してしまいます。
次にスウェイバックを引き起こす可能性が高い筋肉について紹介します。
スウェイバック姿勢を引き起こす7つの筋肉
スウェイバックになる原因は以下の2つにあります
- 筋肉が短縮している(大腿筋膜張筋、ハムストリングス、内腹斜筋)
- 筋肉が筋力低下を起こしている(頚部屈筋群、脊柱起立筋、外腹斜筋、大臀筋)
これらの筋がスウェイバック姿勢を起こす原因です。これらの筋がいくつ当てはまるかは人それぞれです。一つかもしれませんし、五つかもしれません。ちなみに私見ですが、痛みの強さと原因となる筋の数は比例しないと思います。痛みが強いからといってたくさん問題があるかどうかはわかりません。次章で一つずつ自分の問題になる筋肉を探してみましょう。
あなたはスウェイバック姿勢?
まずは自分がスウェイバック姿勢になっているかどうか確かめてみましょう。普段立っている姿勢を横からスマホで撮影してください。カメラの機能でグリッドは有効にしておいてください(画面に線が入ります)。
まず理想的な姿勢の基準から学びましょう。理想的な立位は下のような姿勢です。

上図にある耳たぶ、肩の先端(医学的用語では肩峰と言います)、大転子(足の付け根外側の出っ張った骨)、膝の隙間の前後中央、外くるぶし(正確にはくるぶしの少し前)が一直線を通る姿勢が理想的です。
次に撮った写真を見ていただき、
- くるぶしよりも太ももの付け根外側の出っ張った骨が前にある
- 肩よりも頭が前にあって顎が上がっている
当てはまる場合は、スウェイバック姿勢になっていると考えていいと思います。
それがわかったら、次はスウェイバック姿勢を作り出している原因の筋肉を特定していきましょう。
あなたがスウェイバック姿勢になっている原因を見つけて治療しよう
短縮している可能性がある筋3つを確認してみよう
これから3つの筋肉のどれが短縮しているかを確かめていきます。短縮筋に対してはストレッチをしていくのですが、ストレッチの注意点をお伝えしておきます。ストレッチは、
反動をつけずに伸ばした姿勢を30秒キープする
これを守ってください。実は筋肉は一つの構造体ではなく、サルコメアと呼ばれる小さな鎖のようなもののつながりでできています。この鎖の数が減ってしまうと筋肉は短くなり、増えると長くなります。サルコメアを増やすためには筋肉を持続的に伸ばす必要があり、一定期間筋肉を伸ばされると脳が、「これ以上伸ばされると筋肉が切れてしまう」と考えその鎖を増やしていきます(細胞分裂を起こします)。実践するとき、もしパートナーの方がいる場合は、その方に軽く押してもらうと効果的だと思います。私も前屈する際よく娘に後ろから押してもらいます。自分の力だけだと伸ばす力が弱いですし、何より継続が大切なので楽しみながらが大切です。
◉大腿筋膜張筋

この筋肉は太ももの外側にあり、足を外に開いたり前に持ち上げたりする働きがあります。短縮しているか確かめてみましょう。

横向きの姿勢をとって、下側の足を曲げます。次に上側の足を床の方に下ろした時に、膝が床に付かず浮いてしまう、上側の足の太もも外側が突っ張ってしまう場合は大腿筋膜張筋が短縮している可能性があります。この時注意するのは、骨盤を床に向かって垂直に固定しておいてください。骨盤を動かしてしまうと当筋が短縮しているかどうか見極められません。

もし短縮していることがわかったら上図のような姿勢をとって少しずつ大腿筋膜張筋を伸ばしましょう。時間をかけて両膝ともに床につけるようにしましょう。
◉ハムストリングス

この筋肉は太ももの裏側にあり、足を後ろに引いたり、膝を曲げたりする筋肉です。下図のように誰かに膝を伸ばしたまま上に持ち上げてもらいましょう。この時に太ももの裏に電気が走る感じや痺れがある場合椎間板ヘルニアの可能性があるため一度受診することをお勧めします。そのような症状がなく、70°まで上がらなければハムストリングスが短縮している可能性があります。この筋肉が短くなると骨盤が寝てしまい、正常な背骨のカーブがなくなり、背中側の筋、靭帯、皮膚まで常に突っ張った状態になってしまうのです。試しに、腰に触れたり押してみてください。自分の体験上、皮膚にゆとりがなくパツパツした感じで、筋肉もカチカチに固くなっている人が多いです。また自分もハムストリングスが短い傾向にあるので、腰をマッサージしてもこの筋肉が短いままでは改善しないことも身をもって知っています。

前述したように反動をつけずに、足を30秒上げ続けます。手伝ってくれる人がいれば上図のように足を上げてもらうといいと思います。もしいない場合は下図のようなストレッチでも構いません。

◉内腹斜筋

この筋肉は体幹を捻る、横に倒す、腹圧を高めるという働きがあります。この筋肉が短縮すると体幹の可動性が低下してしまいます。

左右どちらにも50°倒せることが正常です。それよりも少ない場合は内腹斜筋が短縮している可能性があります。

50°倒せることを目標にしっかり脇腹を伸ばして内腹斜筋を伸ばしましょう。
筋力低下している可能性がある筋4つを確認してみよう
次は筋力低下している可能性のある筋肉を探っていきます。理学療法士としては、短縮した筋肉を伸ばすよりも筋力低下を改善することのほうが優先順位は高いと考えています。なぜなら、どこかが筋力低下を起こした結果、それによる不安定さを解消するために筋肉が短縮してしまった、という流れが自然だからです。ですので、これから伝える4つの筋が筋力低下を起こしていないか必ず確かめてみてください。
◉頚部屈筋群
仰向けになって頭だけ持ち上げて足の指先をみてみてください。20回繰り返せない、または20秒保てない場合は筋力低下を起こしていると思われます。もしできなかったらぜひトレーニングしてみてください。難しい場合は膝を立てておへそを見るでも構いません。やり続けば誰でもできますので継続が大切です。

◉脊柱起立筋

これは背中全体を覆う筋肉で、体幹を重力に負けずに起こしておく筋肉です。これが弱ると猫背になってしまいます。

この姿勢を20秒保つ or 20回繰り返す ができますか?できない場合はぜひ筋力強化してみましょう。
◉外腹斜筋

外腹斜筋は体を捻るときに使う運動です。この筋肉が弱ると腹圧が低下し、背骨にストレスがかかり続けてしまいます。仰向けで寝た状態で、左の膝と右肘、右膝と左肘がつきますか?これを右5回、左5回、計10回繰り返すことができない場合は、外腹斜筋の筋力低下があるかもしれません。もし可能な人は20回に挑戦してみてください。

◉大臀筋

家を建てるときに頑丈な基礎を作ってから柱を立てると思いますが、人体では骨盤が基礎、背骨が柱にあたります。大臀筋はお尻の筋肉で、股関節を伸ばす時に働く筋肉であり、また骨盤の安定性を高めてくれる筋肉でもあります。大臀筋の筋力低下により骨盤が不安定になると背骨も不安定になり、過剰に筋肉が働いたり余計なストレスがかかってしまいます。人体も家も基礎が大事なのは同じです。
仰向けで膝を立て、お尻を上げます。この時にイラストほど背中まであげなくて構いませんが、肛門を閉めることを意識して20回上下運動ができますでしょうか?できない場合は筋力低下している可能性がありますので、最低でも20回繰り返せるようにしましょう。

決めたら実践3週間!!
ターゲットにする筋肉を決めたらこれを3週間継続します。3週間なんて長くてやってられないと思うかもしれません。しかし腰痛はある日急に起こったのではなく、長年の蓄積の結果起こっています。要は今の姿勢を修正しない限りまた腰痛が出てきてしまいます。いろんな本やネットで調べて数回繰り返しても効果が薄い、またはぶり返してしまうのはこのためです。根本から腰痛を改善するためには脳が新しい姿勢を覚える必要がありますので、それには最低でも3週間は継続する必要があるのです。とにかくやってみることが大切です。お風呂上がりにやってみてください、おそらく1日15分から20分程度しかかからないと思います。1日だけでも体が軽くなる感覚が得られるでしょう。この際注意するのは、痛みが増えない範囲で行いましょう。軽い筋肉痛はOKですが、翌日痛くて動けなくなったりしたらもしかしたらやりすぎているかもしれません。そしてこれを21回繰り返すだけです。21日後、始めに行った数値化を再度実践してみてください。数字が改善していればターゲットとしている筋は正解、変わらない場合はターゲットの筋を変えてみてください。
痛みのない生活は素晴らしいものです。一緒に頑張りましょう!