理学療法士が教える腰痛の本当の原因と治療法ー首・肩編ー

crop anonymous osteopath straightening shoulders of woman in doctor office 腰痛改善
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腰痛改善シリーズ第3弾は、スウェイバック編、足編についで、次は【首・肩編】です。意外に首や肩の問題が腰痛を引き起こしていることも少なくありません。足や股関節を動かしてもあまり腰痛改善に効果がなかった方はこちらを読んでいただければと思います。

首と肩の問題がなぜ腰痛につながるのか

まず、なぜ腰痛に首と肩が関係しているのかをお話しします。頭の重さは一般的に体重の約10%くらいのと言われています。体重60kgの人であれば6kg、これはボウリングの球の13ポンドに相当します。普段自分の頭の重さなんて意識しませんが、意外に重いものが体の一番上に乗っかっているということになります。同様に腕全体は片方で体重の約6%、両側で12%となります。60kgの人なら約7kg、ボウリングの球に置き換えれば16ポンドになります。

もし頭と腕が背骨に対して真上の位置にあればその重さによって身体にかかる負担は少なくなります。しかしもし背骨に対してどちらも前方に位置していたらどうなるでしょう。球は前に転がっていきますから13ポンドと16ポンドの球を後ろの筋肉で支えなければなりません。そこで最も負担を強いられなければならないのが腰の筋肉なのです。しかも寝ているとき以外はずっとその負担がかかり続けてしまうのです。ちなみに私の経験上、腰痛になりやすい職業はNo.1は【長距離ドライバー】です。長時間座ったままでハンドル操作のために常に手は前になければならない、また、目の前の風景に集中しなければならないためどうしても頭は背骨よりも前にある傾向になりますし、疲労により猫背になりやすいかもしれません。私が担当した長距離ドライバーの患者様で腰痛を持っている人は、大抵腰の筋肉や皮膚がパツパツに張っている方がとても多かったのです。腰は悪者ではなく、ずっと頑張ってくれている縁の下の力持ちなのです。この理論がわかれば、腰をマッサージしても治らない理由がお分かりだと思います。治すべきは腰ではなく、頭・手の位置なのです。

腰痛がある人の首・肩の特徴

スマホで自分の立っている姿勢を横から撮影してみてください。グリッド(線)を入れておきましょう。以前、スウェイバック姿勢編でもお伝えしましたがおさらいです。理想的な立位姿勢はこの図になります。

この線が一直線であればあるほど理想的ですが、なかなかそんな人はいませんので、ズレてても心配しないでください。今回は耳たぶの位置と肩の先端の位置に注目してください。もし肩の先端より耳たぶが前にあったら、確実に腰に負担がかかっています。

同様に腕の位置を確かめます。肩の見方はいくつかあります。

①手の位置、または肩の先端が大転子(股関節の出っ張った骨)よりも前にあるか?
②肩甲骨が横から見えるか?

この2つのうちどちらかが当てはまったら腰に負担がかかっている可能性があります。

腰痛にならない首の作り方

重たい頭を支えているのは、頸椎という首の骨です。頭に比べて首ってとても細くなっています。その細い首を支えている筋肉の中で、前側(喉がある方)についている筋肉がこの頚長筋と頭長筋です。この筋肉は頭の位置が軸よりも前にあると働きが弱くなります。先ほどの横から撮った写真で頭が前になっている人はこれらの筋肉が少し弱くなっている可能性があります。まずはこの2つの筋肉を鍛えていきましょう。

方法はCSEx というトレーニング方法を紹介します。(下図)。CSEx はまず,仰向けで頭をまっすぐにして,眼の上下運動をします(目の筋肉と頚部の筋肉は一緒に働きます!)。上10秒間、下10秒間凝視する運動を10セット実施します。次に,頸椎のカーブに合わせて枕を入れます(図ではカフを入れ圧迫する力を測っていますが、普通の家にはないので枕や丸めたタオルでOK)。この状態から親指を眉間に当てて抵抗をかけ,口を開けてうなずき動作(顎をひくようにして頸椎を曲げる)を軽く行います。この時、親指でしっかり押し付けて後頭部が浮かないようにします。これを10秒間保持させる運動を5セット実施します。このとき,首筋の筋(胸鎖乳突筋)があまり浮き出ないように注意してください。

 この研究は腰痛の改善のための研究ではなくこのエクササイズが立位バランスの改善に関係しているということを報告してくださった論文ですが、頚部の筋のトレーニングにはとても効果的なエクササイズであることは間違いないので、ぜひ試してみてください。

谷田 惣亮.宇於崎孝.スタビライゼーションエクササイズが重心動揺に与える影響.佛教大学保健医療技術学部論集 第13号.2019より引用

次は、外側頭直筋と前頭直筋を伸ばします。この2つの筋肉は首の後ろ側についており、頭部を固定してくれる筋です。先ほどの頚長筋と頭長筋は弱くなりやすい筋肉でしたが、この外側頭直筋と前頭直筋は頭が前にあると硬くなってしまう筋肉たちです。ですので頭の位置が前にある場合は、この筋肉をストレッチして伸ばしていく必要があります。

 

腰痛にならない肩の作り方

次は肩の位置を治していきましょう。腰痛を抱えている方の肩周囲の筋は基本的に筋力低下を起こしている人が多いです。そのためまずはしっかりプランクで肩甲骨周り、体幹の筋力強化を目指します。

まずプランクで10秒を3セット、その後プランクの状態から肘で床を推して背中を上に持ち上げるようにします。4秒で持ち上げたら次は4秒で胸を床に近づけます。これを10セット繰り返しましょう。

頭部・肩は意外と腰痛と関係していると思わない人が普通だと思います。しかし重力のある地球上で生活している以上は、どうしても負担がかかる部分、かからない部分が生じてしまうことは避けては通れません。それがどの部分にあるかはその人それぞれであり、腰痛を直すのであれば頭や肩、手にも問題が潜んでいる可能性があることに早く気づくことが肝要になります。ぜひ実践してみてください。

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